※裏、暴力描写注意
※かなりバッドエンド寄り
※可哀想な臨也さん








 シズちゃんは、狂っている。
 そんなことを考えながら、視界を占めるシズちゃんの体躯を眺めた。いや、実際のところそんな余裕なんてない。呼吸するのさえ難しいと感じるほどに身体を激しく前後に揺さぶられ、胸の突起や自身の先端を舐められ弄られ、身体の至るところに存在する性感体と呼ばれる部位を刺激され続ける。それでいて、俺の自身の根本はリングできつく締め付けられており、達することは許されていない。そのあまりの快楽に、目からは生理的な涙が零れ、口端からはだらしなく涎を流し、言葉にならない、意味のない喘ぎを吐き出し続けた。

「い、ざやっ……!」
「あ、ああ、や、んんっ……! ふ、う……、はっ、ぅあ、やぁっ……!」
「いざや、いざやっ……!」
「や、や、そこっ……! ひっ、ぃあ、あああっ……!」

 目尻の水滴を舐めとったかと思えば、シズちゃんはいきなり俺の身体を反転させた。もちろん、硬く立ち上がったシズちゃんのモノが突き刺さったままの状態で。
 姿勢が変わり、四つん這いにさせられて腰を高く上げるような格好になったら、その分だけ深く突き刺さるようになるシズちゃん自身にまた悲鳴を上げる。元々この穴は排泄の役割しかないのだ。受け入れるようには出来ていないその部分を、酷く大きな質量の物体で滅茶苦茶にされる苦痛を、この男はわかっているのだろうか。

「あぁ、ここだったな」
「ひぃっ……! や、そこは、しずちゃ、だめっ……!」
「何が駄目なんだよ、気持ち良いんだろ?」
「っう、あ、……! たすけ、や、も、むりぃ……っ!」

 すがり付く物もなく、仕方なしにシーツをぎゅっと掴んだ。背後からぴったりと身体を密着させられて、項に鼻を寄せられる。くんっと鼻を鳴らすその仕草だけで、俺の身体は敏感に反応を示した。後孔からは聞きたくもないぐちゅぐちゅという卑猥な音がひっきりなしに上がり、吐き出すことの叶わない自身は鬱血して醜く腫れ上がっている。行き場のない濁流を体内に溜め込み、それでいて快楽の源泉を刺激され続けるようなその行為は、ただの地獄でしかなかった。ビクビクと身体が痙攣する、シーツを握り締める両手の甲が白くなっているのがチカチカと歪む視界の端に見えた。

「っ、いざ、や……! いく、ぞ……!」
「っあ、あっ、ヤぁっああああああアアアッ……!」

 一滴も溢すな、とでも言わんばかりに熱い奔流を中に注ぎ込まれる。吐き出すことなく達し敏感になった身体を、シズちゃんは再び揺すった。

「抜かず3発、な? バックから続けて3回中出ししたら孕むらしい、ぞ……」
「ひっ、うっ……く、ぅ……」
「臨也、溢すなよ? 大切な大切な大切な大切な、大切な俺たちの子供なんだからな」

 だからあと2回、頑張ろうな? と。そう耳元で囁く声は酷く甘く、優しい。

 シズちゃんは、狂っている。




 ぐちゅり、と粘着質な音を立て、シズちゃんのモノが引き抜かれた。ようやく解放される、そのことに安堵し、意識を手放そうとしたその瞬間に、再び後孔に無機質な質量を埋め込まれる。無遠慮に中を擦るその塊はみっちりと隙間無く後孔を満たした。

「な、んで……」
「精子が溢れたら子供が出来ねえだろ?」
「は、……ねぇ、なに言ってるの?」
「早く生まれねえかな、俺たちの子」

 そう言って、シズちゃんは俺の腹を優しく、優しく撫でた。中に何度も出されたせいで心なしか膨らんだようにも見える。まるで妊娠しているかのように。

「ね、ぇ……シズちゃん、俺、男だよ? 妊娠するわけ、」

 背筋に伝う冷たい汗。俺にはシズちゃんがわからなかった。怖いと、そう思いながら絞るように声を出せば、それは途中で遮られた。
 シズちゃんの平手が、頬に飛ぶ。彼にとっては、本当に軽い平手打ちだったのだろう。しかし、俺にとってはそうではなかった。鼻から生温い液体が伝う。頬が燃えるように熱く、恐らく口内を切ったのだろう、口の中に鉄の味が広がった。

「なぁ……なんでそんなこと、言うんだ……?」
「しず、ちゃ」
「俺は、臨也のこと、こんなに、愛してる、のに」
「しず、」
「臨也は俺たちの子供、欲しくないのか? ……俺のこと、嫌いになったか?」

 シズちゃんが、あのシズちゃんが泣いている。好きだ、愛してると甘い言葉を囁きながら、泣いている。
 俺だって、シズちゃんのことを愛してる。それは確かな事実だ。けれど、こんなシズちゃんは知らない。これまで散々彼のことを化物と罵ってきたが、彼に恐怖を感じるようになったのは、いったいいつ頃からだっただろうか。シズちゃんは、狂ってしまった。何が彼をそうしたのか、俺にはわからない。

「なぁ、俺の子供、生んでくれよ」
「っ、シズちゃ、ん」
「妊娠したら、不安も減るから、大丈夫だから、な?」
「っ、く、……」
「男の子なら、俺に似ても手前に似ても良い男になるな……女の子なら手前のとこの妹みたいに美人になるに決まってる……」

 笑いながら、シズちゃんは俺の頭を撫で、血で汚れた顔をべろりと舐める。どうしてこんなことになってしまったのだろう。怖い。彼の愛が、狂気染みたその行為が、怖い。




 毎日のように犯され、中出しされて膨れた腹を撫でられ、俺の感覚は、麻痺していた。
 俺が妊娠しないから、シズちゃんは、狂ってしまった。俺のせいだ。俺が、悪い。
 そうしていつしか俺は、妊娠しない自分の身体を恨むようになった。俺が妊娠すれば。シズちゃんの子供を産めば、今俺の腹を優しく撫でる彼は、きっと、元の正常な彼に戻ってくれるはずだ。


「ぅっ、あ……はっ……」

 込み上げる吐き気を、必死で堪える。最近は、食べ物の匂いを嗅ぐだけで辛いと思うようになった。かと思えば柑橘類や酸っぱい物が無性に食べたくなったり、まるで身体が作り変わったような感覚を覚える。

「なぁ、最近手前、少し丸くなったんじゃないか?」

 幸せそうにシズちゃんが微笑み、優しく俺の腹を撫でる。ああ、シズちゃんが笑ってくれている。幸せだ、幸せ。シズちゃんが笑ってくれれば、俺も幸せだ。




 そうして、俺は妊娠した。
 性別など関係がなかった。俺はシズちゃんを愛してる。だから、彼の子供が宿る自分の腹部を、愛しいと思いながら触った。






2010.11.24
静雄も臨也も病んでる
続きます


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