※静臨
※裏注意





 まあこんなものか、と携帯で時間を確認してから臨也のマンションに再び戻る。2時間くらいで帰る、と言っておきながらもう既に3時間程が過ぎていた。なるべく音を立てないように静かに扉を開け、ゆっくりと寝室に向かう。部屋の前に立つが、臨也の声はほとんど聞こえてこなかった。出ていく前はあんなに盛大に喘いでいたというのに。
 少しだけ寝室の扉を開いて、中の様子を覗き見る。大きめのベッドの上で、臨也の白い肢体が時折ビクリと跳ねるのが見えた。おかしい、と思い部屋に入り臨也に近寄ると、どうやら気を失っているようだった。
 ビデオカメラはそのままに、ビクビクと身体を震わせる臨也に再び近寄る。バイブそのものの振動はもう止まっているみたいだったが、未だにローターの方は小さく振動を続けているらしく、ヴヴ、と虫の羽音のような音が微かに聞こえる。
 シーツは既に臨也の吐き出した白濁でぐちゃぐちゃに濡れており、酷い有り様だった。しかしその光景に煽られているのも確かだ。よくよく考えてみれば、最初に何度か臨也の中で達しただけだったのだ。暴発しそうな欲望を、堪える理由など何一つ、存在しない。
 ズボンのベルトに手をかけながら広いベッドに乗り上げる。脱力している臨也の身体を仰向けにして、膝裏を掴み腰を上げさせた。眼前に晒された臨也の後孔から手早くバイブとローターを抜く。ぐちゅ、と水音が響いて、ひくりとヒクつく穴が卑猥だ。縁を指先でなぞると面白いくらいに飲み込まれていく。寝ている相手に焦らす必要もない。指で穴を広げ、そこに自身を突き込んだ。

「……、ん、ふ……」
「っ、はぁ……」

 眠る臨也の眉間に皺が寄るのを眺めていると、ムクムクと自分の中の欲望がさらに頭をもたげていくような感覚に陥る。早く、早く鳴かせたい。この欲望を全て受け止めろ、と思いつつ、臨也の胸の突起に噛み付いた。

「……ひっいあ゛ああっ……!?」
「よう、長いオヤスミだったみてぇだな」
「いだ、痛いいい……っ! んんぅっ……、あ゛、や、舐め、な、ヒィっ……!? 」

 強く歯を立てたそこを、今度はねっとりと舐め上げる。ただでさえ全身が敏感になっているだろうに、その刺激は臨也にとって強烈だったようだ。ビクビクと体を跳ねさせ、目からはボロボロと涙を溢している。

「っうぅ……、ふ……も、やぁ……」
「何が嫌なんだよ、こんな漏らしたみてぇにシーツ濡らしやがって」
「っい゛、ひぁ、あああっ……!? や、も、動くなぁっ……!」
「っ、手前は命令できる立場じゃねぇだろう、がっ……!」
「あっ、あ゛、あっ……!」

 反抗的な臨也の態度に苛立ち、腰を強く打ち付けると断続的に臨也の悲鳴が上がる。……その声に、また興奮する。

「嫌味とか、回りくどい言い方とかさえしなけりゃ、手前の声、嫌いじゃねぇのによっ」
「っ、……、う、も、無理……、う、あああっ……!」
「だから、何が無理なのかちゃんと説明しろよ……そんなことも出来ねえのかよ手前」

 呆れたようにため息を吐くと、再び中がきゅうと締め付けてきた。こういった所は素直だ。しかし罵られて締めるなんてコイツは相当な変態らしい。

「う……、ゆるし、ゆるして……」
「あ?」
「ごめ、ごめんなさ……っ、ゆるして……、も、無理……」

 いきなり、何かの糸が切れたかのように、臨也が謝罪の声を上げた。思わず律動を止めて、中から自身を引き抜く。ずちゅ、と濡れた音だけがやけに響いた。

「ふ、ぅ……ゆるして、ゆるしてください……ごめんなさ、い……う、あ、……」
「……臨也?」
「もう、むり……、イ、きたく、ないれす……たす、けて……ふ、あ……」

 臨也の態度のあまりの変化に、ちくりと胸が痛む。目からは止めどなく涙が溢れ、いつもの臨也じゃないみたいだった。

「手、外してぇ……やら、これもうやらぁ……しずちゃ、シズちゃん……っ」
「っ……手前、自分からやっててそれは反則だろうが……」

 カチャカチャと緩慢な動作で手首を揺り動かすと、臨也は俺の名前を繰り返し呼び続けた。舌打ちをして、その鎖をブチリと力任せに千切ってやる。元々は俺を拘束するために準備していたものらしいが、こんな簡単に千切れるようなものなら意味がなかっただろうなあと頭の隅でぼんやり考える。

「しず、ちゃ……しずちゃん……っ」
「あー……」
「ふぁっ……あ、しずちゃ……ひっ……ん、……」

 泣きじゃくりながら、力ない腕を俺の首に回す臨也に、こちらが脱力する。

「しずちゃ……すき、すき……っ」
「……手前もよ、こんな回りくどいことしないで最初からそう素直なら良いのにな」
「ふ、ぅ……シズちゃん……、すき、すきぃ……っ、しず、んんっ」

 好き、と。壊れた人形のように繰り返す臨也の口を、塞いでやる。漏れ出す声も、息も、全て飲み込んでやった。全部、こいつは髪の毛の一本一本から吐き出す空気まで、俺のもんだ。
















「……最悪」
「あ゛?」
「立てない、動けない、身体中痛い、もう無理、死ねよバカシズ」

 あの後、気を失った臨也をそのまま放置する訳にもいかず風呂に連れていき(途中で臨也が目を覚ましてしまい、そのまま何回か致してしまったのはこの際置いておくとして)、ぐちゃぐちゃのシーツを取り替え、臨也を寝かしつけた。黒い髪をゆっくりと撫でてやる。喋らない時のコイツは、好きだ。俺はコイツのことが、思ったより嫌いじゃないらしい。
 と、そんな穏やかな気持ちに浸っていた時に、臨也が目を覚ました。開口一番、悪態ばかり吐くコイツに舌打ちする。

「変態、鬼畜、絶倫……ばか、ばか、アホ……」
「さっきはあんなに好き好き煩かったくせによ……」
「、はあ? なに言ってんの、そんなわけないじゃん! とうとう頭イカレちゃったの!?」
「……手前が泣きながら『ごめんなさい』って言ってるビデオ、見せてやろうか、ああ゛?」
「なっ……!」

 臨也は顔を真っ赤にして、信じられないとでも言うように口をパクパクと動かしていた。毛布を頭から被り隠れようとする臨也が可笑しくてたまらない。

「『シズちゃんすきすき〜』って、手前、煩かったぞ」
「……っ、うるさい……!」
「俺も手前のこと嫌いじゃねえ」
「っ……!?」

 毛布からちらりと顔を出してこちらを見る臨也は、いつもの憎たらしいノミ蟲野郎ではなかった。ドキドキ、する。

「あー……多分、手前が盛った薬のせいだ、ぜったい」
「……はぁ、?」
「じゃなかったら、手前がこんなに可愛く見えるはずがねえんだよなぁ、なあ手前が盛った薬って、惚れ薬か何かだったんだろ? そうに違いねぇ」
「……なら、そう思っとけば」

 ぷい、と顔を背け、臨也が唇を尖らせる。その耳が、真っ赤になっていることにコイツは気がついているのだろうか。そして、俺の頬が異常に熱いことや、鼓動が早くなっていることにコイツが気付くのは、一体いつのことになるんだろうか。






Love drug!4






2010.9.2
75000hit企画
静臨/Love drug!の続き、鬼畜静雄だけど最後には甘々



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