※夏目友人帳
※名取と夏目
※名取独白






 互いに一人でいることに慣れてしまって、互いに吐いた嘘が互いを苦しめる。
 ただぼんやりと、自分たちはただ寂しいだけなのかもしれないと思った。だから、傷口を舐めあうように互いに触れ、唇を、身体を重ねるのだろうか。

 私が知る限り、夏目はとても寂しい子だ。人の優しさに慣れておらず、だから小さなふれあいに怯えながらもそれを嬉しそうに享受する。

 そして夏目は酷く優しい子だ。相手のことを気にして、気をつかいすぎる節がある。また愛されることを怖がり、無条件に与えられる愛情を拒む。だから、私が夏目と一緒にいるのは夏目に妖を見る能力があるからなのだ、と夏目は思い込んでいる。自分に価値がないと思っているのかもしれない。

 だが、もし夏目に妖を見る能力がなかったとしたら、私は夏目に興味を持たなかっただろう。話すこともなかった。それは事実だ。

 隣ですう、と寝息をたてる夏目の頭に手を置いて、ゆっくりと撫でてやる。色素の薄い、細くて柔らかな髪の毛はさらさらと手に心地よい。


 互いに傷口を舐めあうようにしている、と思っていた。さもなくば、私が夏目を癒しているのだと。
 閉じた瞼の上に唇を落とす。夏目は寂しい子だ、だけれども、人を気遣う優しさがあって、そういう意味で強い子だ。
 互いに傷口を舐めあうのではない、私が夏目を癒しているのではない。そう、私が夏目に癒されている。




 寂しいのは、私の方だった。






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