(呪文を唱えれば何かになれる。
そんな魔法使いを夢見たのは、
羨ましいと思っていたのは、
一体いつの頃だろう?)



「僕がキラだ、」

彼の声は硬い、
小さな倉庫で演説するかのように両手を広げて語る、
その精神がすでに壊れかけていることは、とうの昔に気付いていた。

「僕以外の誰がここまで世界を変えることが出来た?」

彼は目の前に座る私の後継者すら見ていない。
私は彼の孤独を知っている。
一冊の黒いノート、
その魔法を手に入れた彼は、
精神をすり減らし、
体重も落ちて、
相談出来る人も居らず、
正義の指針である父親を亡くし、

人のように振る舞えず、
泣いていたのだ、

真っ直ぐに世界のことを思っている彼は、
なんて寂しいのだろう?

そろそろ彼がやって来る。
私は彼を抱き締めて、
可哀想な魔法使いに、
優しくキスをするのだ。



(もう二度と、
魔法使いを羨みはしない、)

MAGICAL WORLD




―…―…―
(♪MAGICAL WORLD/鬼束ちひろ)


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