「竜崎」

 舌先から伝う他人の口内の熱さに辟易する。
 彼は熱っぽい。
 それが常のことなのか、それとも今日に限ってのことなのかはわからない。わかるつもりもない。

「お前の身体はひんやりしているね」

 きもちいい、
 ふふ、と彼は笑む。
 あぁ、気分が悪い。


 早く出てこいと彼の中の黒い影に問いかける。
 この感情はただの執着心なのだ。
 だからこそ、目の前の彼よりも、彼の内に潜む何かを捕らえようと、いつまでも追い続けている。

 そう、これはただの執着心。
 だから私は気付かないふりをする。

 足元から少しずつ忍び寄る死の香りと、
 彼に対する(執着心以外の)気持ち、



 囚われたのは、どっちだ。(きっと既に手遅れ。)




足元に潜む何かに
気付かないように


BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
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