紅茶に入れる角砂糖。
ひとつずつ積み上げては、
「ライト」
呼ばれて気付く。
ぼんやりとしていたらしい。
少し高めの、彼女の声。
「…ミサ」
「大丈夫?」
何が、と尋ねようとしたが、その必要もなかった。
ミサの視線の先。
僕の手元。
カップに並々と注がれた、既に飽和状態の琥珀色の液体。
はぁ、と大きく息をつく。
またやってしまったらしい。
彼女は僕の手元に手を伸ばす。
「らいと、」
ミサは、つい数分前までストレートだった、僕の手元にある紅茶を口に含む。
唇が触れた。
甘ったるい紅茶の香りがする。
まるで彼と、
「らいと、」
「………ミサ」
ミサの手が、優しく僕の頭を撫でる。優しく優しく、そして抱き込むように腕を回して。
「……泣いても、いいよ」
積み上げた角砂糖が、
音も立てずに崩れ落ちた。
昼下がりの話