「私がキスしようとするとすぐに怒るんです」
「ミサの時は怒らないよ」

この行為に意味なんてないって顔をしてるけどね、そのことはわざわざ彼に言う必要もないもの。

「でもね、ミサの話はちゃんと聞いてくれない、」
「私の時は興味深そうに聞いていますけど」

でもそれが表面上だけのポーズだっていうことを私は知っている。彼女に教えるつもりはないが。

「どちらにしろ、」
「月は冷たい」
「でも好きなんでしょう?」
「竜崎さんこそ」

彼女は知らないだろう。
月くんが私に冷たい理由。
私のことを
いつか殺さないといけない人間だと思っているから、
情が移ってしまうのを恐れている。

彼は知らないでしょう。
月が私に冷たい理由。
自分がキラだというプレッシャーに負けそうで、
同じキラの私に辛く当たることで
自分が壊れないようにしているの。

だから彼女は知らないだろう。
私があなたの立場に立ちたいと思っていることを。
同じキラとして立つならば、
いくらでも馴れ合うことができるのに。

だから彼は知らないでしょう。
私があなたの立場に立ちたいと思っていることを。
Lとしてならば、
月の恐れを取り除けるのに。



だから、
彼は、
彼女は、
きっと知らない。




彼が私に冷たい理由





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