嘘の嘘が本当になるならば、
 いつも嘘をついている彼(もしくは私または私達)は、



「ねぇ竜崎、」
「どうしましたか」
「今日はエイプリルフールだね」
「それが何か」
「好きだよ、竜崎」

 その言葉に、私は思わず彼の顔を凝視した。そんな私が余程おかしかったのだろう、嘘だよ、と彼は笑う。

「好き、すきだよ竜崎」
「月くん」
「すき、だいすきあいしてる、」
「月くん、」
「でも僕はお前を愛せないんだ」
「月、くん」
「だって僕はキラだから」
「らいとくん」
「いつかお前を殺すんだ」
「ねぇらいとくん、」
「いつか殺さなきゃいけないんだから、愛したらいけないんだよ」
「月くん、もうやめてください」
「どうして?これは嘘だよ、だって今日はエイプリルフールじゃないか。すき、あいしてるよ竜崎、」
「ならどうして貴方は泣いているんですか」

 彼は真っ直ぐ私を見つめている。
 その大きな瞳から、水滴が零れ落ちる様さえ、ただ美しい。

「僕が言ったことは全部嘘なんだよ」
「月くん」
「僕はキラだ、」
「月くん」
「悪人だけじゃない、たくさんの、罪の無い人も殺してきた」
「月、くん」
「本気にするなよ竜崎、全部嘘だ」
「らいとくん、」
 静かに涙を溢しながら喋り続ける彼は、ただ美しくて悲しかった。

「ならば私も嘘をつきましょう」
「竜崎、」
「月くん、私は貴方を愛しています」
「竜崎」
「好きです、愛しています、こんな気持ちは初めてなんです」
「竜崎、」
「泣かないで下さい月くん、これは嘘なんですから」
「りゅうざき、」
「出来るなら、Lであることもキラであることも捨て去って、二人で逃げたいと思っています」
「竜崎」
「しかしそれは出来ないんです、私は貴方を死刑にしなければならない」
「竜崎、もう、」
「本気にしないで下さい、全て嘘です」
「ならどうしてお前も泣いてるんだ」

 二人しかいない部屋。
 沈黙に支配されて空気は冷たい。

「すき、すきだよ竜崎」
「私も貴方を愛しています」

 そうして私達は互いに嘘をついた。嘘を吐き出した、嘘で塗り固められた唇を重ねあった。その唇は、真実の味がした。





They can not tell a lie
when the day of April.


その日は、嘘つきな(更に言うならば非力で不器用な)私達が唯一真実を口に出来る日




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