※キョンが性転換
古泉が電波




 いったい何処の誰だ、古泉一樹が完璧超人だなんて言った奴は。


「見てください、これ!」

 そう言って古泉が差し出したのは、まぁ、奴の左手なんだが、それが只の左手ではないことだけはわかった。

「描いてみたんです…似合いますか?」

 先程からいそいそとボールペンを使って何かしているな、くらいにしか思っていなかったのだが……開いた口が塞がらない。
 どうですか?とキラキラと瞳を輝かせて此方を見つめる古泉の左手――しかもよりによって薬指ときている――には、ボールペンで描かれた二重線が見える。

「…古泉、聞いてもいいか」
「はい!どうしました?」
「……それはなんだ」

 もちろん指輪ですよ、貴女と僕の愛の証です!
 私の問いかけに対して、かなり電波な答えを返す古泉に少なからず頭痛を覚えた。似合いますか?と尋ねる様は、さながら尻尾をばしんばしんと振り回す犬のようだ。
 こうして古泉と付き合うようになるまでは、確かに奴は完璧超人だった。何でもさらりとこなし、スマートで頭も良く、格好良い。
 しかしそれらは全てが表面上のもので、実際の古泉は只の電波野郎だった。頭が弱いのだと思う。世の中の女性が見たら卒倒するだろう、間違いなく。実際私も卒倒しかけた。

「…似合いませんか?」
 私よりも大きな体を小さくして、向かいに座る私を上目で見つめる古泉は、正直に言おう、すごく可愛い。女の私に可愛いと形容される彼氏ってのもどうなんだと思うが、本当のことなんだから仕方ない。
 ボールペンで描かれた指輪は非常に不格好で、古泉の細くて長い綺麗な指には全くと言って良いほど似合っていないのだが、それをしているのが古泉だと言うだけで、私は「似合ってる」と返事してしまう。

 結局は、惚れた方の負けで、ただほだされているだけなんだけれど、こんな姿の古泉を見れるのは私だけなのだと思うと、酷く嬉しかった。



馬鹿な子ほど




(そうだ、貴女にも描いてあげます!)
(いや、遠慮して――)
(……そう、ですか…)
(……やっぱりお願いしようかな)
(…はい!)



((あぁ、馬鹿な子ほど可愛い!))





―…―…―
2008幸せ古泉計画参加作品


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