古泉一樹の嫌いな所を好きなだけ挙げろと言われれば、俺は両手の指を全て使っても足りない程に列挙することが出来るだろう。これは誇張でも何でもない、実際に数えたら両手の指をそれぞれ二回ずつ折った所で数えるのが面倒になって止めたくらいだ。


 すぅ、と小さく息を吐く音が部室に響いた。ハルヒが朝比奈さんと長門を連れて出て行ってしまったせいで部室は静かすぎるくらいだ。そんな中、何が楽しいのかわからんが古泉と俺は向かいあってボードゲームに興じている、今日はダイヤモンドゲーム。俺がブルーで古泉がレッド、古泉はゲームの片手間で手持ちぶさたに余ったイエローのピンを積み上げてはバランスが保てず崩す、ということを繰り返していた。

「…それ、楽しいか?」
「いえ、あまり考えずにやってますから…」

 特に意味はないんですが、と眉尻を下げる古泉。俺は何となく不愉快で、そんなことする位ならこっちにもっと集中しろ、と青いピンで赤いピンを飛び越しながら呟いた。

「あ、すみません…」
「集中してないから弱いんだよ、お前は」

 不機嫌さを露にする俺に、古泉は焦ったような困ったような微妙な表情を浮かべた。それがまた癪に障る。

「そうやって直ぐに謝る所も嫌いだ」
「え、ぁ、すみません…」
「本当はそう思ってないだろ」
「そんなことは、」
「お前は胡散臭いからな」
「…面と向かって言われると流石に傷付くんですが」
「うるさい、お前はゲームに集中していればいいんだ」

 次、お前の番だろう、と苛々しながら指し示すと、古泉はくつくつと笑い始めた。こいつ、罵られて嬉しいのか、まさかMなのか。

「…おい、何がおかしい」
「…いえ、何でも」
「気味の悪い笑みを浮かべるんじゃない」
「すみません…貴方が、あまりにも可愛らしいもので」
「はぁ?」

 一体今までの会話のどこらへんをどう取ればそんな気持ち悪い受け止め方が出来るんだと問い詰めたくなった。寧ろ問い詰めた。そして俺はその行為を後悔した。

「貴方が怒ってらっしゃるのは、僕がゲームに…貴方に集中してなかったからでしょう?」
「な」
「そうやって貴方が怒って下さるなんて、嬉しいなって思ったんです」

 貴方、意外と独占欲強いんですね、と無駄に格好良く微笑む古泉に、そういう所も嫌いなんだと精一杯の負け惜しみを吐き捨てた。



つまりは只の愛情表現



(否定はしないんですね)
(馬鹿なこと言ってないで続けろよ)
(図星ですか?)
(…ばかやろう、お前なんか嫌いだ)



―…―…―
2008幸せ古泉計画参加作品


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