こいつは何故にここまで俺の勘に障ることばかりするんだまったく。




「いいわね、キョン!これは」
「遊びじゃないんだろ?わかってるわかってる」
「アンタ本当にわかってんの!?…まあ、古泉くんとなら大丈夫だと思うけど…」
「お褒めにあずかり光栄です」


 いくらくじで決まるとは言え、こいつと二人で市内探索だなんて喜ばしくもなんともない。例えばこれがマイスイートエンジェル・朝比奈さんと二人っきりであったならば、俺は皆の喫茶代を奢ることなんてどうでも良いくらいに気にしないのだがな。まったくどうしてこんな風になってしまうのか。神様とやら、俺だってそこそこ真面目に生きてるんだからさ、少しくらい優しくしてくれたって良いだろうよ。

「それでは、行きましょうか」

 涼宮さんたちももう行ってしまわれたみたいですし、と古泉はそのサラッサラの髪を風になびかせて言う。くそぅ、忌々しいやつだ。


 古泉と二人で歩くなんてろくなもんじゃない。
 こいつと並んで歩く度に、俺は劣等感という代物にさいなまれるわけだが、本当に神様ってやつは不公平なんだな。

 感じる視線が半端じゃない。すれ違う女性方は此方をじっと見ては頬を赤く染めてくださるのだが、悲しいかな、俺に向けられる視線はそれはもう冷たすぎるの一言だ。この視線さえ有ればクーラーなんて要らないだろうし、地球温暖化もどうにかなるんじゃないかって思う。
 することもない俺は、とりあえず隣を歩くこいつをじっと睨みつけてみる。ちょっとの身長差さえも忌々しいな。イケメンってやつは得することが多くて羨ましいよまったく。

「どうかしましたか?」

 なんて話しかけてくるが、ならばそのニヤケっ面をどうにかしてほしい。切実に。お前は何が楽しいんだ。

「いえ、貴方とこうして歩くなんて喜ばしい限りだな、と思いまして」

 俺は嬉しくともなんともないぞ。
「だって、こうして二人で歩くなんて、デートみたいじゃないですか」

 ぎゅ、と古泉が俺の手を握る。止めろ、往来で男二人が恋人繋ぎだなんて切実に視線が痛い!痛すぎる!
 慌てて古泉の手を振り払うと、ヤツはやれやれ、と言った風に肩を竦めた。困ったのはお前の頭だこの馬鹿者!

「さて、約2時間30分…何をしましょうか」

 映画でも見ますか?と問いかけてくる古泉。暫しの間考えて、お前の奢りなら行ってやっても良いぞと答えると、ヤツはよりいっそう顔を綻ばせた。



恋愛宣言



 映画は何かよくわからない恋愛物を見せられるし(ちょうど良い時間帯の物がそれしかなかったのだ)、しかも館内では暗いのを良いことにずっと俺の手を握ってるし、「キスしても?」なんて言って顔を近づけるな、気持ち悪い!
 だがそれら全てを拒めなくて、実は嬉しそうな顔の古泉を見るのが好きだなんていう自分が、一番忌々しいものだ、まったく!






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -