■ 書き出し2

「ごめんなさい、揃いのカトラリーがなくて」

そう言って人数分出されたカップ&ソーサーはたしかに何一つ揃っておらず、それぞれがそれぞれの存在を主張しているようだった。小ぶりで品のいい花模様、シンプルな白に浮き上がる縁取り、東洋を思わせる独特の色使い。どれも、見とれてしまう様だった。

そして、意外だった。なんとなく、多くの来客があって、その都度快いもてなしをしているような雰囲気があったものだから。このカトラリーたちは、美しくそれを否定していた。




誰の話を書こうとしたのかすら定かでない

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