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1つ、気になっていることがある。なんやかんやと人生のターニングポイントとしか言えないビックイベントが進行中だったせいでさらっと流されてしまっているけど、あの、リドルが私を好きだ、と言ったことだ。いや、あの私だってリドルにはお世話になったし感謝もしてるし嫌いか好きかだったら好きだしね!最初こそあれだったけどリドルはいいやつだしね!ってなんか1人で考えてて恥ずかしくなってきた。とりあえず、私はあれが本当なのか、っていうか私はどうしたらいいのか気になって仕方がなかったのだ。

と、いうことで、1発すっきり聞いてしまおうと思います。

「リドル」

「何」

返事はするものの視線は本から外してくれない。え、これ好きな子に対する態度?仕方ない、相手はリドルだ。気を取り直して、

「リドル」

「だから何「私のこと好き?」

ピシッ

という効果音がついたみたいだった。身動きこそ取ってないもののもはや空気が固まってしまったみたいだ。私から吹っ掛けておいたくせになんだか緊張してしまう。

ただ、言い出しっぺなだけあって私はいくらか冷静なわけで。リドルの視線が文を読むために流れることなく一点で止まってしまっているのに気がついたのであった。

「リド「好きだよ」

「え」

お、おぉ……思ったより直球で返された。どうしよう、何、馬鹿なの私。

しかしリドルは黙ってしまった。私の予想では何かしら言ってくるかと思ったんだけど。ただまだ視線は一度もあわせてくれていない。なんか失礼じゃね?とまで思い始めた私は、ソファに座るリドルに目線を合わせて

「私も好きだよ」

言ってやった。


すると、私の羞恥がやってくる前に、ようやくリドルが視線を合わせてくれたわけなんだけど、それがもうぽかんって。いままで見たことない顔してる。そんなリドルに私は私で面食らっていると、また顔を逸らされて、「そう」と一言だけ。

ものすごく居心地が悪い空気の中、私は気づいてしまった。ポーカーフェイスのままであるリドルの耳が赤く染まっていることに。

「好き」

「ねぇ、リドル」

「あーいらーびゅー」

鏡を見なくてもわかる。今たぶんすごいニヤついてる。やばい、楽しい。あの、リドルが黙ってこそいるけど、耳が真っ赤になってるんだもの!え、初めてじゃない?私がこんな優位に立ってるの。

「大好き」

調子に乗って、最後のはなんかさすがに気持ち悪かったかもしれないキャラじゃなかった、と思っていると、それまで頑なに沈黙を守っていたリドルがようやく口を開いた。


「誘ってるのか?」


お、おぉ……?怒ってらっしゃる?これでもかって眉間に皺が寄せられているんだけども、耳どころかお顔真っ赤なんですけど。いつものあの黒オーラ出てないよどうしたの。

ぽかんとしてると、ぐいっと腕を引っ張られて、体勢を崩したわたしはリドルの腕の中にダイブした。

「本当に、好きだと思ってるのか?」

「う、え、」

「ちゃんと答えろ」

どうしよう。完全にリドルの反応が楽しすぎて調子乗ってたけど、改めてってなるとなんか急に意識しちゃって言葉がでない。何私馬鹿なの?

ぎゅうって抱きしめられてリドルの顔は見えないしさっきまでのからかうモードは完全に消え失せてしまった。

「ナマエ」

多分、早くって急かしてるんだろう。そういえばリドルからはたくさんいってもらった。あのよくわからない恋人(仮)のときも含めて。うわぁ、ほんと、恥ずかし……


「ちゃんとすきです……」


消え入りそうな声は、それでもリドルの耳に届いたようでぎゅうっと抱きしめる力が強くなって、それがまた羞恥心を煽るのでした。




fin


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Things base and vile, holding no quantity,
Love can transpose to form and dignity.
Love looks not with the eyes but with the mind,
And therefore is wing'd Cupid painted blind.
(A Midsummer Night's Dream / William Shakespeare)