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目が覚めてから父さんとも話して、とにかく油断せずにまだ様子を見ようってことになった。また元に戻ってしまう可能性もなくはない、し。というわけで外にぶらぶら遊びに行くわけにもいかず私はなんだかデジャブを感じるような軟禁生活を送っているのです。

「紅茶いれたよー」

「あぁ、ありがとう」

いる間好きにしていいと父さんが書斎をあけてくれた。どうやらリドルのお気に召したようで暇さえあれば父さんの書斎に言って本を読んでる。確かに、父さんの書斎はなんとも言えない心地よさがあるとは私も思ってるけど。静かだけど緊張しすぎる感じでもなく、かと言って眠くなっちゃう感じもない、そんな気持ちいい感じ。

リドルは一瞬こちらに視線を寄こしてそれからまた本へと戻してしまった。私は、といえば別に我が家だし今更父さんの本とか読みたいとも思わないし結局のところ暇なのでこうしてリドルに紅茶をいれてあげたりしている。私が飲むついでだけど。

「ナマエのいれる紅茶、好きだよ」

「っぶ!」

「……汚いな」

「は、だって何急に!」

「思ったことを言っただけなんだけど」


「今まで一度も言わなかったよ」

「そりゃ、君をつけあがらせると思ったからね」

今はいいのかよつけあがっても…とはもう言えなかった。そうなのだ、最近のリドルはとても素直なのだ。怖いくらいに。さらっと言うのがまたむかつくんだ。こっちばっかり意識してるみたいで。なんだよもう、調子狂うなぁ。

こくり、とまだ私には熱い紅茶を流し込む。今日は濃いめのアップルティーだ。砂糖も多めにしたから甘さたっぷり。と、言っても紅茶本来のおいしさを引き立てる程度だけど。ここら辺はやっぱりこだわるのだ!その証拠にリドルもおいしいって、

「砂糖入れ過ぎじゃないか?」

「………私がいれた紅茶は好きなんだなかったの?」

「君がいれる砂糖の量がベストだとは言ってない」

お?おおお?なんだ、まじ前言撤回!なにが素直、だと。いや、素直に物を申しているんだろうけど!せっかくいれてあげたのに文句言うなんて。だったら自分で砂糖いれてこいよ!キッチンに砂糖あるから!と内心悪態をつきながらも私は黙って紅茶を飲む。

だってもう、なんで文句言いながらちゃんと飲んでくれてんの。

「飲まなきゃいいのに」

「別に。せっかくいれたんだから捨てるよりはいいだろ」

「なにそれ。リドルってツンデレだったの?」

「は?意味が分からない」

「リドル、扱い憎くなった」

「ナマエは少し大人しくなったね」

「うるさいな」







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Things base and vile, holding no quantity,
Love can transpose to form and dignity.
Love looks not with the eyes but with the mind,
And therefore is wing'd Cupid painted blind.
(A Midsummer Night's Dream / William Shakespeare)