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目の前にいるのはニッコリと笑ってさらっと愛の告白をしてくれちゃったプレイボーイトム・リドル。(胡散臭い笑みから"愛の"かどうかはよく分からない)もちろん私はそんなやつの隣にいるような可愛らしい、または綺麗な容姿ではなく、全くもって平々凡々な女子生徒なわけで、しかもリドルと初めて話してからまだ1日ともたっていない。つまり恋愛感情からくるものではない、といことだ。

ということは、

「どこに?」

リドルの額に青筋が浮かんだ。

「僕の彼女になってくれってことなんだけど?」

「リドルさん、彼女の意味分かって言ってます?」

「君は僕を馬鹿にしているのかな?」

「いや、あの、リドルの彼女という定義には、成績優秀でイケメンで性格もとても紳士(ということにしておこう)という高スペックでホグワーツ1のモテモテくんに見合う程度な、ボンキュッボンでこちらも成績優秀でもう世界三大美女に入るくらいの美少女で、さらに性格も大和撫子、みたいなそういう完璧な人のことをさすんですよ、あ、これは例だけど」

「僕の彼女くらい、自分で決めるよ」

私の懸命なマシンガントークにも爽やかな笑顔つきでさらりと返すなんて…!何を考えているんだ。なんかさっきまでのやりとりから考えると、相当おかしな性癖がない限り恋愛感情は絶対にありえないから、もう何か裏があるとしか考えられない。てゆうかそもそもこんな、リドルと二人っきりでいるってことだけで後の女子の皆さんの反応が怖いっていうのに、万が一彼女という肩書に収まってみろ、本当に呼び出し食らうかもしれない。そんな漫画みたいな!とか思ってたけど相手がリドルじゃ別だ。


それでも面倒事は嫌い。


「拒否させていただきます」


じゃ、と手をあげて簡単に挨拶してから早々にその部屋から出て行こうと踵を返す。素晴らしく機敏な動作でドアへと向かいよし、やっと昼寝ができるぜ!なんて思ったのも束の間。人生そう甘くはない。

盛大にドアノブを捻る。ありえない勢いでガチャガチャと高速で動かしてみる。

「すいません、このドア開けて下さい」

「さぁ?僕のお願いを聞いてくれたら開くんじゃないかな」

「お願いかぁ…脅迫の間違いだろ!」

私のノリツッコミにより、再び浮かぶ青筋、そしてどす黒くなるオーラ。あぁ、このノリツッコミ癖どうにかしなくちゃ。そもそもなんで突然よく知りもしない私に付き合えだなんておかしすぎる。怪しすぎる。面倒くさすぎる。ちくしょう、と心の中で散々悪態をついてドアを何度も捻るがびくともしない。ちょうど腕にはめていた時計を見る。あれ、そういえばなんで、休日に時計なんか・・・。

「ドラマの再放送の時間!」

「…?」

思い出して慌ててリドルに駆け寄る。リドルは突然慌て出した私をいぶかしむような目で見ていたがこの際そんなことは関係ない。


「リドル、頼むよー。私今日の再放送楽しみにしてたのに!見たらまた戻ってくるからさー」

もちろんそんなお願い通じるはずない。それでも私はすがるように頼んでいたのだがあろうことかリドルは全く他のことを考えていたらしい。

「ドラマってマグルの見るテレビのだよね?」

突拍子もない答えが返ってきた。

「そうだよ、それ以外何があんの!」

「君はマグルの生まれなのか?」

「いや、ハーフだけど」

そう言うと、一瞬驚いたような表情を浮かべたかと思えば、あの爽やか青年という肩書を粉砕する怪しい笑みを浮かべる。もうすでに私は理解していた。爽やか好青年というのがリドルによって故意的につくられていたものだと。

「いやマグルかどうかなんてどうでもいいからね。とにかくドアを開けてくれい」

「じゃあ、めでたく恋人同士ってことで頬にキスでもしてもらおうか」

ハードル上がってるぅっ!?



にっこりと笑顔で言うリドルは最早私にとって噂の超絶美形男子生徒ではない。そんな素晴らしいレッテルはつい先程剥がれおちてしまった。できるならずっと剥がれないままでいて欲しかった。

「誰が、キス、なんか、するか!だったらサラのお説教くらった方がまし」

「全く何が不満なんだって言うんだ。この僕が君なんかを恋人にしようっていうのに」

"なんか"呼ばわりかよッ!?

ムッと眉間に思いっきり皺を寄せなまえはリドルに向き直る。この際だから言ってやろう。こういうやつは一発言ってやらないと分からないもんだ。

「猫かぶりすぎでしょ。こんな嫌みな人とは友人関係も無理!」

「君が低能じゃなかったらもっと丁重に扱うよ」

はぁ、とナマエがため息をつく。無理だ、こいつに口で勝とうなんて。こんなことしている間にもドラマの放送時間が刻々と近づいている。しかし、どうやらリドルも飽きがきたようでとどめを差しにかかった。

「じゃぁ、もう無理矢理にでもなってもらわなくちゃ困るな。別に彼女じゃなくたっていいんだ。君が僕のそばにいれば」

「は?」

思わずドアノブを引っ張るのをやめた。今リドルの口から吐かれたセリフだけ聞いてればなんてキザなヤツなんだろう、と思っただろう。

「主従でもいいけど?」

「彼女でお願いします」

杖出しながら言うって反則でしょ。





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Things base and vile, holding no quantity,
Love can transpose to form and dignity.
Love looks not with the eyes but with the mind,
And therefore is wing'd Cupid painted blind.
(A Midsummer Night's Dream / William Shakespeare)