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「父さん、私はこれからどうしたらいい?」

できるだけ力強く言ったつもりだった。アイリスを石にしてしまったときはリドルに支えてもらった。今はこうして父さんに傍にいてもらっている。誰かに頼ってもらってばかりの自分が嫌だった。だから、とにかくどうにかしてこの瞳の力を抑えることができるのならなんでもしよう、とそれを伝えるために、私の目はまだ腫れて赤いけどしっかり父さんの、それは決して私を映すことはないとしても、目を見て言う。

そんな私の決意とは裏腹に父さんはそうだね、と呟いて、

「リドルと話してみるといい」

と軽い口調で言うだけだった。

バジリスクが父さんに話を聞くように言ってきたからこうして来たっていうのに、当の本人はリドルにってどういうことだ。いくらなんでもリドルが何か知っているようには思えない。本当に心配してくれてるのかもしれないけど、リドルは誰よりも自分の知的好奇心に忠実な人間だ。だから、うん、ただ知りたいだけなの、かも。いやいや当然だよ、あのリドルだよ、うん。とにかく!リドルを探さなくては。父さんは家を出て行ったって言ってたし…なんでこのタイミングで散歩とか行くかな!言われてすぐに私も家を出て適当に歩いているけど…(反対方向とかだったら泣ける)

あ、いた!

「リド、……ル?」

声を上げて走って駆け寄ろうとしたけど、その勢いはいっきになくなった。思わずその場で固まってしまって立ちすくむ。振り向いたリドルの顔が今まで見たことがない表情を浮かべていたからだ。よく分からないけど、何かに苦しんでいるような、でも今にも泣きだしてしまいそうな…なんていうか、弱々しい表情だった。そしてリドルの瞳は、赤かった。真っ赤。それは血を連想させるものでもあり、どこか惹きつけられる美しさを含んでいた。

「ナマエ…」

声は相変わらず澄んだ声。よく女子生徒に向かって心にもないことを言い、私に散々罵倒を浴びせたあの声と変わらない。じゃあなんでそんな顔してるんだ…らしくない。
リドルがゆっくりとこちらに歩いてくる。本当に何かの舞台みたいにその動作が綺麗で立ちすくんだままの私はただそれを見ているだけだった。


「僕は君が好きだ」








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Things base and vile, holding no quantity,
Love can transpose to form and dignity.
Love looks not with the eyes but with the mind,
And therefore is wing'd Cupid painted blind.
(A Midsummer Night's Dream / William Shakespeare)