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なんか最近ものすごい毎日を送っている気がするのは気のせいじゃないと私は思います。正直平穏な生活がもう随分遠くに感じます。(最早女子生徒の嫌悪感丸出しの視線にも慣れたよ)(はいはい皆さんご機嫌よう。今日も素晴らしい眼力ですこと)
さあて、今日の授業はスリザリンとの合同授業だ。つまり気を抜けない奴だ。

「どこ行く気だい?」

「リ、リド…っ!?」

「教室とは逆方向だろう?まさか休み明け一発目からサボろうなんて言うんじゃないだろうね?」


え、あの心なしか声大きくするのやめて下さっ………(此処は結構人通りの多い廊下であってだからリドルとも出くわしてしまったんだろうけど、あの、その、先生近くにいるんだよ!)(最早こいつが心を読んだか読んでないかは問題ではなくなってきているこの虚しさ)

「ま、まさか!サラを迎えに行こうと思って…」

「彼女ならもう行ったよ」

さっきすれ違った、とご丁寧に教えてくだすった。それにしてもわざわざ向こうから絡んでくるなんて相当機嫌がいいのか……、はっ!まさか私何かした!?嵐の前の静けさもとい穏やかさって感じですかっ!?

「授業始まるだろ。早くしろ」

そんな、あれこれ巡らせたのは杞憂だったらしくリドルはいつも通りでした。(いつも通り嫌味なやつでした)











スリザリンとの合同授業は薬草学。だいたい2人1組で調合とか薬の生成とかをやらされる。だからリドルも他の女子生徒に声を掛けられる前に私を捕獲しにきたのだろう。まぁあれだ。リドルとペアを組むようになってから薬を作るのに失敗はしないし余計な工程もうまく省いているようだしすごく薬草学の成績が伸びている。こればっかりはリドルに感謝だ。そういうわけで今回もほぼほぼリドルに任せっきりで薬を煮込んでいた。すっげぇ怪しい色してる。

「ナマエ、僕はあとこっちの材料を刻んでおくから色が青から紫になったら、準備してあるその液体を入れておいてくれ」

「りょうかーい」

そう、この的確な指示により私も一応授業に参加している形をとっていられるのだ。最高。


まぁしかしそんなわけでこの授業では完全に気を抜いていたわけです。だからまさか別の生徒が間違えて液体の入った瓶を取り違えて、私が投入するための液体が入れ替わっていたなんてことには気付きもしなかったわけです。


ドォォンッ

という凄まじい音と衝撃を確かに感じながらもあっという間に意識は失われてしまった。









―――……ナマエ――――

あ、この声は……


――――ナマエ ――――


どうしたの?なんでそんなに苦しそうに呼ぶの?


―――― ナマエ ―――


「ナマエ?」

暗がりが消えた。意識すらしなかったけど今の今まで私は真っ黒な世界で声を聞いていた。あれは、多分、

「ナマエ、大丈夫か?」

「え、あ、うん」

どうやら私は医務室で眠っていたらしい。やけに独特の消毒液のような匂いが鼻につく。リドルはベッドの脇に簡易椅子をおいて座っていた。なんか、予想外というかなんというか。似合わない、らしくないことをしている。リドルってそういうことしなさそうだし。

「調子は、いいのか?」

「うん。別になんとも。どうしたの?リドルがそんなに心配してくれるとか珍しいね!」

「そりゃ、心配くらいはするさ。君、あれから3時間も気絶してたんだよ」

言われて時計を見ればもう午後になっていた。確かに気絶で3時間はちょっとあれだよなぁ。大決闘をしたわけでもあるまいし。あぁ………言えない。まさか昨日の睡眠時間が4時間だったなんて。


「そうそう!リドル、バジリ……ったぁっ!」

「馬鹿。その名を気安く発するな」

「………ひどい、もしかしたらバジルって言ってたかもしれないじゃん…」

うるさい、と一蹴された。さっきまで一応気絶してたんですけど!(睡眠とも言う)

「で、いきなりどうしたんだい?」

「会いに行きたいんですが」

あの時の声を思い出す。ひたすらに私の名前を呼んだ声。あれは確かにバジリスクだった。どうしてリドルではなく私だったのだろうか。それがなんでかなんでかなんて私には到底分からないがとにかく行かなければならない気がした。もちろんリドルは訝るような表情を浮かべているけど、わかったと言って今夜迎えに行く旨を説明された。(私の独断だと先生にみつかるからね)






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Things base and vile, holding no quantity,
Love can transpose to form and dignity.
Love looks not with the eyes but with the mind,
And therefore is wing'd Cupid painted blind.
(A Midsummer Night's Dream / William Shakespeare)