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リドルの誕生日が発覚したにせよ、私にはプレゼントを用意するようなお金はない。(だってクリスマスプレゼントあげたし)というわけで私は、「え、今日リドルの誕生日だったの!知らなかった!おめでとー!」作戦でいくことにした。リドルの誕生日プレゼントを用意するならむしろ自分に巷で人気の小型ゲーム機を贈りたい。と、いうわけでいつもと変わりなく迎えた31日。朝からリドルに捕まりました。

「あー、おはよう?」

「なんで疑問文なんだ」

とりあえず、朝からこうして私の元を訪れるということは、やはりクリスマス同様私をあの部屋に監禁する気でいるらしい。それにしてもリドルと向かい合っていると視界にそわそわこちらを見る女子や、背中から殺気を感じたり、と本当にリドルの誕生日を知らなかったとしてもこの異変にはさすがに気付くな…。

そんなことを考えているうちに無理矢理腕をひかれ、ずるずると引きずられていくので私もここは強行突破に至ることにした!

「リドル!ちょ、今杖落としたっ」

「は?そんな音なんか何も……」


ぐ っ ば い っ !


もちろん隙をついて逃げさせていただきました。私は今日という日の為に念入りな計画を立てていたのだよ。まぁ、簡単に言えば大人しくしていたのだ!もう堪忍しましたよ、と暗に示すために。そしてこの地道な計画は成功したわけだ!あぁ、後ろからなんかとてつもなくドス黒い何かを感じる。だめよナマエ、今振り返ったらクリスマスの二の舞っ!一年の最後くらいまともに幕を閉じたいんじゃーっ!





リドルが重たい溜め息をついていたのを私は知らない。





そうして私は無事グリフィンドールの寮に駆け込むことができた。(怖くて一回も後ろを振り返られなかった……)リドルのことだから何かしら魔法でも使うかと思ったけどしなかったし。(それどころか走って追いかけられても多分逃げ切れなかった)何はともあれこれで私は平穏な大晦日を手に入れた!食事以外絶対寮から出るもんか。

…………あ、れ?なんだろう。確かにリドルは撒いたのに。なんで背後で奴に似たブラックなオーラが…。

「ナマエ、あなた何してるの?」

「は、はぁーいサラ…」


愛の伝道師様がいらした。

「今日はリドルの誕生日でしょう?早く行った方がいいんじゃないかしら?」

「え、え、…そ、そうだったの!?うっそー、知らなかった!」

なんでサラにまで「え、今日リドルの誕生日だったの!知らなかった!おめでとー!」作戦決行してるんだ。

「………ナマエ?」

「あは、あははは…」

いや、うんさすがに今のは挙動不審でした。うそついてるってバレバレでした。だってあれは対リドル用の演技しか考えてなかったし、まさかサラが(ごにょごにょ…

サラがあからさまに疑いの眼差しを向けてくる。困った。非常に。とりあえず乾いた笑いを漏らしながら部屋に戻ったはいいものの…。そもそもなぜこんなにもリドルの誕生日が知れ渡っているんだ。まるで学校行事の1つみたいだよ!もう年間行事に書いておけよ!必死に思考を巡らせてもいい案なんか浮かんでこない。寮以外でリドルに見つからない場所がわからない。そうこうしてるうちに時間は過ぎる。いつ、サラが早く行けと言いにくるかも分からない。


さようなら、私の平穏な1日。

私は重たい足取りで寮を出た。

(サラが笑顔で見送ってくれた)




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Things base and vile, holding no quantity,
Love can transpose to form and dignity.
Love looks not with the eyes but with the mind,
And therefore is wing'd Cupid painted blind.
(A Midsummer Night's Dream / William Shakespeare)