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く、苦しい。さすがにあの量を1人で食べるのは辛かった。というか全部食べきる前にリドルに引っ込められた。(貧乏性のあまり目の前にあるものは食べようとしてしまう)

残念だと思いつつ流石に全部食べていたら真面目な話、豚にでもなっていたかもしれないからよしとしよう。そして私はたらふく食べた後、ぐっすりと昼寝をした。(だから豚になるっつーの)気付けば辺りは薄暗くて雲がなければ夕日が見えているであろう時間帯になっている。

「やっと起きたのか」

「んー、ごちそうさま」

微妙に会話が成り立っていないのは気にしない。リドルに溜め息つかれた。

「ナマエ」

「ん?」

名前を呼ばれたかと思うと何やら小包を投げられた。まだ寝ぼけ眼の私はそれをなんとかキャッチする。緑とシルバーの包装。なんともリドルらしい。けどこれは一体…。

「クリスマスプレゼントだ」

「えぇっ!?」

ま さ か !
つい先日、「なんでこの僕がキリストだかなんだかわけの分からないやつを祝福しなくちゃいけないんだ」と豪語していたやつがプレゼントだなんて!それ以前にこの私に!?

大パニックを起こす私を余所にリドルは何やら難しい顔をしていた。瞬時にこれが単なる"クリスマスプレゼント"ではないと分かってしまう。


「それは瞳の効力を弱めてくれるはずだ」

「え?」

「僕がバジリスクを動かす前に万が一君の瞳が本来の能力を発揮してしまっては困る」

「あー………」


そういうこと、ね。

手のひらで転がる2つのピアス。小さくシンプルな真っ赤なピアス。その赤はいつだったかにリドルの瞳が赤く見えたその時を彷彿とさせた。そのせいなのか小さいはずなのにひどく重く感じた。(そうして私はぼんやりと、あぁ私ピアス穴開けてないや、とか考える)


ベシッ

「なっ!?」

「私もあげる」

とりあえず、重たい気持ちは置いておく。だってクリスマスだし。まだそんな力があるわけじゃないし。くよくよ考えたって仕方がない!と、いうわけでプレゼントだ。不本意ながらサラに口うるさく言われたため通販で頼んでおいたのだ。

「ありがとう」

「リドルがお礼言ってる!?嵐っ!?竜巻っ!?ハリケーンっ!?」

「ナマエ、それ使い回し」

「チ、チ、チ、敢えてだよ。敢えて」

「うっとおしい」

そう言いながらリドルはがさがさと包みを開ける。あ、開けるんだ。なんか恥ずかしいな、こういうのって。

「………」

「えへ!」

包みから出てきたのはどぎつい黄色いマフラー。黄色いマフラー
些細な配慮を入れて少しくすんだ色になってはいるがどう見てもリドルが好むようなものとは思えない。否、リドルに気に入ってもらいたくて送ったのではない。


「たまにはリドルも明るい色を身に付けなよ」

「君のセンスのなさには感服するよ」

「それはそれは有り難き幸せ」

リドルが眉をピクリと動かす。

(我ながら切り返しがうまくなったもんだ)




そのあと、そのマフラーを身に付けたリドルが予想外にしっかりと着こなしていたためイケメンは何着ても似合うのだ、と再確認して奥歯をかみしめたのであった。






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Things base and vile, holding no quantity,
Love can transpose to form and dignity.
Love looks not with the eyes but with the mind,
And therefore is wing'd Cupid painted blind.
(A Midsummer Night's Dream / William Shakespeare)