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結局連れてこられたのは空き教室。またもや、こんなところあったんだ、ってくらい知らない教室で私は卒業するころも十分の一くらいしかホグワーツのことを知らないんじゃないかと思えてきた。

「ねぇナマエさん、クリスマス休暇帰っていただけないかしら?」

「……………無理、なんですよね〜」


だってあなたよりリドルの方が怖いから!(決断ものの3秒)


「私も手荒なことはしたくないのですけれど…」

彼女が全部いい終わらないうちに(そういえばまだ名前が分からない。名乗りはしないと思うけど)教室のドアがガタッと音を立てた。

彼女の不穏な言葉も手伝い私は素早く杖に手を掛けた。







「うっ……!」


カランカランと、杖が弾き飛んだ音がする。気づいたときには私は腕を押さえつけられ床に押し付けられていた。どうやら背中をおもいっきり肘打ちか何かされたらしい。ジンジンと痛む。その拍子に杖を離してしまった。で、それを見逃さず今現在後ろで私を押さえつけている人々がぶっ飛ばした、と。(そう、私は複数人によって押さえつけられていた)


「(チッ、向こうもそれなりに考えてたのか…)」


自慢じゃないが実技はいい!けど、彼女の話とドアの動きにまんまと嵌められたわけだ。(残念ながら頭はよくなかった)背後に人の気配があることに気付かなかったなんて。


「もう一度聞くわ。帰っていただけないかしら?」

「……………無理」

「そう」

リドルが怖いってのはもちろんある。だけど、こんな形でじゃあ帰りますなんて言ったらなんだかこいつらに負けた気分になるじゃないか!私の心の中には沸々と闘争心が沸き上がってきていた。シャーリーは一瞬悲しげな表情を浮かべたかと思うと、それが見間違いだったかのように口元を三日月に歪めた。



「うっ………!」


突然腹部に鈍い痛みが走った。続いて髪をつかまれ顔を上げさせられる。

「じゃあちょっとお仕置き受けてもらわなくちゃ」

またスリザリンのネクタイをした女子生徒だ。にっこり笑ったかと思うとナマエの頬をおもいっきりひっぱたく。コノヤロ、と思い反撃にでようにもいかんせん他の女子生徒がナマエに馬乗りになっている。


そのまま何度か暴行を受けた。きっとそこらじゅう痣だらけだ。女子生徒たちは満足したのかケラケラ笑っている。


「今日はこれくらいにしといてあげるわ。クリスマスまでゆっくり考えて頂戴」


そう言い残して彼女らは教室を出て行こうとした。ナマエは彼女達が出ていく前に重たい体に鞭を打ち、杖へと走った。すっかり満足したようでナマエのことなど気付いていない。


「(ばーか)」


そして小声で呪文を唱え、逃げた。


「アグアメンティ!」


後ろから、きゃあ!とか冷たーい!とか言う声が聞こえ、思わず口端をあげる。もちろんいつまでもそんなところにいるわけもなく、魔法が当たったことがわかればすぐ様その場を立ち去った。



それにしても、

思った以上に体当たり系だな、スリザリン女子め。もっと陰湿にねちねちくるかと思ったのに。これ以上ホグワーツに留まっていると私の身がもたない。リドルには内緒でクリスマスは家に帰ろう。





リドルへの怒りを押さえナマエはそう決意した。






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Things base and vile, holding no quantity,
Love can transpose to form and dignity.
Love looks not with the eyes but with the mind,
And therefore is wing'd Cupid painted blind.
(A Midsummer Night's Dream / William Shakespeare)