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多勢に無勢。はたまたリンチ、お呼びだし。まぁ、いろいろと呼び方はあるけれど要するにいいものではない。あぁ、まさか私がこんな目に遭う日が来るとは。全く、リドルと会ってから本当にいいことがない。そんな私の思っていることなど露知らず、シャーリーはジリジリと詰め寄ってくる。それに続いて後ろのスリザリンの生徒も詰め寄ってくるものだから気分の悪いことこの上ない。私は小さく溜め息をついた。

「リドルとのことって言っても、リドルが私に側にいて欲しいって言うからなんだけど(監視兼君たち避けとして)」

「ふん、きっとリドルは本気じゃないのよ。一生恋人がいなさそうなあなたに同情したのかも知れないわ」

「まぁ例えそうだとしてもあんたたちも同じでしょ?」

それだけ吐き捨ててナマエはその場を後にしようとした。しかしそれを妨げる連なる杖。全く、低レベルないじめも大概にしてもらいたいもんだ。

「よくもそんな無礼なことが言えるわね!」

シャーリーがそう叫んだかと思えば次々に呪文を唱える声がする。一気に杖から閃光が走る。



でも、自慢じゃないけど私の実技の成績はいい。


「きゃああっ」

悲鳴ともに辺りに白煙でいっぱいになった。ゲホゲホと咳き込む声が聞こえ、うっすらと煙が晴れて見えてきたもの―――


「い、いやぁぁぁっ」

再びあがった悲鳴。それはどうしたかシャーリーたちのものでわんわん喚きながら走って行ってしまった。取り残されたナマエ。俯いて肩を震わせている。

「……………ぶはっ」

クックッと笑が堪えきれない。我ながら怪しいがこれでも抑えているのだ。もし今誰かが通りかかったら変人レッテルをいただくことだろう。
シャーリーたちが呪文を唱えるとともにナマエが使った魔法ははね除け呪文。その名の通り魔法を反射するように跳ね返す魔法だ。魔力の強い相手じゃ跳ね返しきれないがどうやらシャーリーたちぐらいだったら大丈夫だったようだ。それで何が面白かったかって言うと…

「君にしては傑作じゃないか。でもいつまでも1人で笑っていない方がいいと思うよ」

突然廊下の角からリドルの声がした。振り返ると口端をあげて愉快そうにしている。

「それにしても馬鹿なやつらだな。そもそも君にあんな魔法かけたって意味ないだろうに」

「すいませんね、女の子らしくなくて」

シャーリーたちのかけた魔法はなんの呪文だったのかよくわからなかったけど、結果として髪の毛が爆発していた。白煙の中で見えたシルエットからでも十分に分かるほど髪の毛が逆立ち、まるで360゜全ての方向から静電気で引っ張られるように。彼女たちからしたら毎日端正こめて手入れをしている髪がそんな風になってしまうのは悲鳴ものなんだろう。私はそんな目に遭ったところで、恥ずかしいとは思うけれどきっと彼女たちほどメンタルにダメージは追わない。

「別に馬鹿にしてるわけじゃないよ?」

「(白々しいやつめ)まぁ、私爆発したって髪短いし」

「確かにあの長さでの爆発は驚いたな」

シャーリーを含め私を取り囲んでいた生徒の大半が腰ほどまであるきれいな髪をしていた。それがライオンよろしくな感じに立っていて爆笑せずにいられるわけがない。インパクトだけで面白い。思い出すとまた笑いが込み上げてきた。またリドルに馬鹿にされる、と思ってチラッとリドルを見ると何やら俯いてしかも肩を震わせている。

「リドル?」

「………君ってやっぱり、面白いよ」

人の気も知らないで、と腸煮えくり返る気持ちだったけどリドルがあんまり可笑しそうにしているから思わず私まで笑ってしまった。

リドルもこんな風にして笑うんだ、って思ってしまったのは内緒。(ちゃんと人間の血が通っているらしい!)





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Things base and vile, holding no quantity,
Love can transpose to form and dignity.
Love looks not with the eyes but with the mind,
And therefore is wing'd Cupid painted blind.
(A Midsummer Night's Dream / William Shakespeare)