12 


やっぱり疲れていたせいかいつもよりもぐっすり眠っていたらしい。起きるのが遅いナマエは、寮に1人取り残されていれことも少なくない。それにしても今日は寝すぎたようで急がなければ朝食を取り逃してしまう!ナマエはまだ寝ている体を無理やり動かして急いで大広間に向かった。


「今日は遅かったわね、ナマエ」

「うん」

大広間に行くとサラはもう食べ終わっていた。ナマエは簡単に答えるとクロワッサンやかぼちゃスープを次々と流し込んでいく。途中サラが、そんなに急いで食べると詰まらせるわよ、なんて苦笑しているが、時間はないわおなかはすいたわでやむを得ないのだから仕方がない。そうしてがつがつと食べているナマエに歩み寄る人物が1人。

「やぁナマエ、おはよう」

出た。なんちゃって紳士、トム・リドル。

「ほらナマエ、食べてないで挨拶くらいしたらどうなの?」

「……はよ」

思わず顔をしかめてリドルを見ていたらサラに怒られた。仕方なくぶす、と答える。それを見たサラはわざとらしく大きくため息をついた。

「ごめんなさい、なんか照れちゃってるみたいで」

「分かってるよ。ナマエは照れ屋だからね」

何を分かってるんだ、何を。にこりと愛想のよい笑顔を浮かべているリドル。つい先日までこれを自然に見ていたのかと思うとなんだか不思議だ。というか何をしにきたんだこいつは。出来ればあまり近づかないでもらいたい。じわじわと増していく女子生徒の視線が痛い。ストレスのせいで幻聴まで聞いてるんだぞこっちは。

「で?どうかしたの?」

「どうかしたのって、恋人のもとに行くのに何か理由がいるのかい?」

「………!」

こいつは分かって言っているんだろう。私とリドルが(偽)恋人になったのなんて昨日の今日であって、もちろんこの大広間にいる人々が知っているはずもない。それなのにわざわざ言うなんて……!なんだかリドルの声だけが大広間に響いたような気さえしてきた。もちろんそんなことはないのだがとにかく視線が…。

「じゃあナマエ、悪いけどこれからスラグホーン先生に呼ばれてるんだ」

「そう、いってらっしゃい(グッジョブセイウチ!)」

「素っ気ないなぁ」

クスクスと可笑しそうに声をあげて笑うリドルはやっぱり俳優になった方がいい。結局何をしにきたのかよく分からなかったけど奴は行った。しかも一緒にサラまで行ってしまった。なんかまだ仕上げてないレポートがあったらしい。ははは、私なんか出す気ないけどね!
何はともあれ満腹に朝食をとりよし、これから魔法史で一眠りだな、なんて思ってのほほんと廊下を歩いていた。後から考えるとなんて間抜けだったろう。サラと一緒に寮に戻っていればよかった。



「どういうことなのか説明していただけます?ミョウジさん」



なるほど。リドルはこのフラグを作りに来ていたわけか。

あ、殺意が。





[14/62]

index


Things base and vile, holding no quantity,
Love can transpose to form and dignity.
Love looks not with the eyes but with the mind,
And therefore is wing'd Cupid painted blind.
(A Midsummer Night's Dream / William Shakespeare)