05翌朝、氷室くんも学校なのでその前にあの公園に寄ってくれるそうだ。私の方が授業開始が遅いから氷室くんには申し訳ない。時間ぎりぎりとかになってしまうんじゃないかな。それでも手当してくれると申し出てくれたのでお言葉に甘えてしまうあたり私ってば都合がいいというかなんというか。それでもやっぱり引きずる足の痛みは感じられるから断るなんて選択肢もなかったのだ。
「氷室くん!」
「おはようございます」
「おはよう」
公園が見えるともう氷室くんは公園のベンチに座っていた。いつものジャージ姿ではなくて制服だ。なんか新鮮!
「寒いですけど、足出してもらえますか?」
「はーい、お願いします」
確かにまだ気温も上り切っていないこの時間はまだ寒い。ほっかいろこそまだ出していないもののコートに手袋、と氷室くんに比べるとだいぶもふもふしている。寒いなぁ、とは思いつつも口には出さず大人しくパンプス、そして靴下を脱ぐ。ひぃ、やっぱ寒い。
「湿布を貼ってその上に包帯巻いておきますから」
「え、大げさじゃない?」
「足引きずってるくせに何言ってるんですか」
それを言われてしまっては何も言えない。私が罰が悪そうにしたのを見て、氷室くんはおかしそうに、固定のためにも巻いておいた方がいいと思いますよ、とつけ加えた。それを先に言いたまえよ。じゃ、失礼します、と氷室くんの手が触れる。
「ひゃ、」
「すいません、冷たいですよね?」
「いや、まぁ冷たい、けど。氷室君冷え性?冷たすぎじゃない?」
「冷え性、じゃないと思いますけど。そんなに気にならないし」
そんなもんかなぁ、と呟いて手際よく動く氷室くんの手を見つめる。その冷たさにびっくりしたのは最初だけで、あっという間に私自身の足の熱も冷気にやられて冷たくなってしまった。あとやっぱり湿布も冷たい。包帯も巻き終わってもう終わりだと思ったのだけれど氷室くんがまだ足を離してくれない。不思議に思っていたらクスリ、と笑うのが聞こえた。
「氷室くん?」
「いや、なんかこれお姫様みたいですね」
は?とかなり間の抜けた声。
「こうして足を持ってると、ガラスの靴でもはめてるみたいです」
「ガラスの、靴…」
確かに、私が座って彼が足を持ちあげている様はそういう風に見えなくもない。それにしたって、その発想はなんていゆか、ロマンチックというか乙女思考というか、でもやっぱりイケメンが言えば許されるな、とか、とりあえず私の顔が熱くなってしまったので、「手当てありがとう!」と大きな声で言って、私は慌てて靴を履いたのだった。
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