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それはまた、なんの変哲もない日だった。いつも通りバイトをして。なんか結構忙しくて疲れたな、なんて思いながらとぼとぼ歩いて。こちらを振り返った氷室くんを見て手を振って。いつものように帰路についていたのだ。

そのまま彼はいつものように練習に戻ると思いきや、今日は何やら難しい顔をしてこっちに歩いてきた。

「どうかした?」

「苗字さんこそ」

「え?」

「足、どうしたんですか?」

足、と言われて一瞬首をかしげる。とくにいつもと違った様子はないけど、と思いはっとする。そういえば、大したことではないけど若干足を捻ったのだ。そこまで痛くないし寝れば治るレベルだと思う。ぶっちゃけよくあることだ。そのせいで足と言われてもすぐに分からなかった。

「ちょっと捻っただけだよ。ってゆうかなんでわかったの?」

「ヒールの音のリズムがおかしかったので」

「な、なるほど」

よく聞いてるもんだな、と本当に関心する。すごい。こういう気配りっていうか気がつくのって大事だよね。私もすごくそのスキル欲しいわ。

「大丈夫ですか?」

「ん?あぁ、大丈夫大丈夫。よくあるし」

「………明日バイトは?」

「あるよー」

「なら、湿布とか貼っておいた方がいいですよ」

「でも、湿布ないんだよね」

一人暮らししていると使わないものは一切ない。もともと体も強いから前に熱を出したときなんかは本当に困った。絆創膏とかならともかくさすがに湿布は持ってない。

「手当、しますよ」

「そんな心配しなくても大丈夫だよ!ほっとけば治るって」


そう言って不服げな氷室くんと別れて3日が経った。

「苗字さん?」

「ん……?何か……」

「悪化してません?」

氷室くんの仰る通りであった。歩く分には気にならなかった痛みがじわじわと強くなっていって、坂道が負担に感じ、今軽く引きずってしまっている。

「だから言ったのに…」

「うぅ、だってこんなことになるとは」

「明日の朝、簡単に固定します。大学行く前に、ここ寄れますか?」

「え、でも、いいの?」

「このままじゃ悪化してしまいますし。あ、医者にはちゃんと行って下さいよ」

「はーい」






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