08
「はっ……、く…はぁ……」
走り切った!こんな、苦しい思いをしたのは久しぶりだ。体力もない状態だからランナーズハイになることもなく走りながら呼吸を整えるのに必死だった。走り終えた今も、本当は歩いたりした方がいいのは重々承知だけど立てない。足が震えてしまっている。よくもまぁここまでやったよ私。培われた運動部根性ですねこれは。
「お疲れ様」
ふと、気が付けば赤司くんが側にいてタオルを差し出してくれた。絞り出すようにお礼を言って滴り続ける汗を拭う。まだ肩で息はしてるけど呼吸もそこそこ落ち着いてきた。
「こんなの、久しぶりで、結構厳しかった、な…」
「うん、ちょっと無理させてしまったね」
まぁ、体力つけるとか筋トレするには多少無理させて休息とかエネルギー補給する方が効果的だしね。分かってはいるがきつかった。走るのは嫌いじゃないからせめてランナーズハイになれるくらいの体力は取り戻したいところ。
「苗字さんの体に汗が伝うのがすごく魅力的だったよ」
「私汗っかきなんだよ…ね……?」
おい、ちょっと聞き流しそうになった。え、今のセーフ?いやいやアウトだよね。なんでさも当たり前のようにそういうこと言うかなもう。
「足の筋にそって流れて行く汗を目で追わずにはいられなかったよ。最後の方なんてだいぶきつかったんじゃないかな。ちょっと表情に出てたよ。それがまた良かったんだけど」
にこり、と微笑みながらそんなことを言うもんだからこれが副音声化何かかと思いたくなってしまう。この方男の人に褒められることなんてなかったもので、いくら赤司くんがおかしなことを言っているとは分かっていてもなんだか照れくさくて顔が熱くなるのが分かった。
「赤司くん、セクハラです…」
照れ隠しのために、ぼそりと言い返してみても「あぁ、ごめん」で流されてしまった。
prev next