GandC | ナノ
03


帰宅した。

予定していた時間よりも1時間ほど過ぎてしまっているがバイトもない今日の夜はまだまだ長い。今週の授業では運よくどれも課題が出なかったのでゆっくりDVDでも見ようかな、というところである。チラ、と手元の携帯を見る。いつものかわいいにゃんこの待ち受けである。かわいい。しかし画面右上にEメール受信を知らせるアイコンが出ている。

赤司くんからだ。



From:赤司征十郎
Sub:
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明日の夜は空いてる?




あぁ……中学の頃、赤司くんとメールのやり取りをする関係になるなんて夢にも思わなかった。しかもあまり良い意味ではなく。結局あの後、断り切れずに赤司くんの申し出を受け入れてしまったのです。いや、てゆうかYesしか受け付けないよ、みたいな顔して笑ってるからもう、何も言えないよね。それに赤司くんの要望に付き合ってあげる立場だから、晩ご飯をいつでもご馳走してくれるそうだ。いや、あの、別に食べ物で釣られたとかそういうのでは、ですね。まぁ、正直、ね。毎日一人暮らしでご飯作るのも大変だし、自分で作ったものにも飽きてきたし…うん、まぁ釣られたってのもあるけどね!体なまってたのもあるしちょうどいいかな、なーんて。


To:赤司征十郎
Sub: Re;
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大丈夫だよ(^-^)

あ、ジャージで行った方がいい?




From:赤司征十郎
Sub: Re;Re;
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明日はまだジャージじゃなくて大丈夫。
19時に大学前で待ってて欲しい。




おぉ、赤司くん予想外に返信早いんだな。赤司くんだし、なんか、私もすぐ返さないとって思ってしまう。いや、ほんと、悪いんだけどやっぱり中学の頃の(勝手な)イメージがあるし、普通の人と接するのとは違うよね。それになんかこう、よく分からない性癖まで暴露されてしまって私は正直彼とどう接したらいいか分からないのです。それなのにYesと返事してしまったあたり晩ご飯に釣られた感は否めないのですが。


ふぅ、と1つ息を吐く。溜息じゃないです。返信する前に紅茶でもいれてこようと台所へ向かおうとしたらまた携帯が振動する。赤司くん、じゃないよね?まだ返信してないし。と思いつつ携帯に手を伸ばす。振動が止まないし電話みたいだ。画面を見ると「高尾和成」の文字。

「もしもし?」

「おー!苗字、今ひま?クラス会の話で電話したんだけどさ」

「うん。大丈夫。で、クラス会?」

「そうそう。苗字、集まれる奴らだけでちょっと会って近況報告でも、みたいなノリで」

「そうなんだ。クラス会ねー…」

久しぶりに聞いた高尾の声は相変わらず元気だ。高尾は確か工学系の大学行ったんだっけか、とぼんやりと情報の整理。皆けっこうそれぞれで進んだから誰がどこに行ったとか覚えきれてなかったりする。

「なんかあった?」

「へ?」

「いや、なんかぼんやりしてね?」

さすがハイスペックと言われるだけある。電話越しでこれとかもし今面と向かって会ったら何も言わなくても感づくに違いない。そして、実は赤司くんとの謎の再会に戸惑っていた私は、高尾なら、と事のあらましを一切話してしまった。もちろん名前は伏せて。(さすがに他人に性癖曝すのはかわいそうだし)


「ちょ、マジで!?お前なんでそれ受けたの!?マジうける!」

相談した結果がこれだよ!語尾に草生やしまくってるのが目に見えるよ!ヒーヒー言いやがって。相変わらず笑いの沸点低いな。さっきから笑って話が進まない。

「で、高尾くんはどう思いますか」

「怒んなって!……まー、でも真面目な話な、そんなのに付き合わない方がいいと思うぜ。バイトの紹介とかじゃねぇんだからさ。そいつ明らかに苗字のこと好きだろ。しかもエロいこと考えてる考えてないの問題じゃなくっても体目的ってやっぱあぶねーって」

うん、これだ。こういうのが聞きたかったんだよ高尾。遅いのだよ高尾(高尾の友達の真似)

「だよねー。ちゃんと考えてみる」


クラス会は多分出れるってことを伝えて高尾との電話を切った。うん、やっぱり冷静に考えたらそうだよね。分かってはいたんだよ。でも相手が赤司くんっていうことが問題なんだ。普通のクラスメイトにそんなこと言われたらドン引きでお断りしたんだけどね…。あ、赤司くんにももちろんドン引きしたんだけど断りづらいってのがあって…。

とりあえず、明日話をしてみよう。



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