02
とりあえず、ということで近場の星バックスに入店しました。キャラメルマキアートでいい?といってさっさと注文を済ませてスマートに手渡してくるこいつできる、とか思いながらちょうど空いていた1番隅っこの席に腰かけた私と赤司くん。せっかく頂いたので遠慮なくキャラメルマキアートを頂きながらそれこそ他愛のない会話を繰り広げていた。至極自然に話していた赤司くんが「さて、」と一息入れてなんだかこれから本題に移りますというかのごとく私を真っ直ぐ見てきたので、そんな様子を無視するわけにもいかず、というかなんか雰囲気に圧されそうで私も変に緊張してしまっているのが現状ですはい。
赤司くんははぁ、とわざとらしくそれも物憂げに溜息をついてみたかと思えば無表情で喋り始めた。
「本当、僕も世間知らずだったよ。あの頃は君のような人はいくらでもいると思っていたんだ。中学なんてまだほんの限られた空間でしかない、より開かれた空間でもっと理想的な人物が現れるだろうって。それに君自身もまだ中学生だっただろ。発達段階っていうのは十分に理解していたしだから尚更僕の理想に叶い得るのかどうか確信しきれないところがあったんだ。こんなこと言っても言い訳じみているな。とにかく、だ。僕はその華奢な体全てがまず僕の好みだし、とくに首筋が好きだな。手首の細さや女性なのに浮き出てる血管も扇情的だし。あとその腰もすごく素敵だと思うんだが少し細すぎじゃないかい?まぁ、食べても太らないってよく言ってたしね。もうここまでくると体質なんじゃないかな?キャラメルマキアートにハチミツぶちこんでる人初めてみたよ。それだけやっても余計な脂肪がついてないから別に問題はないんだけどね。あ、もちろん僕は君のその貧乳も好きだよ。脂肪がなくても君の肉体は女性独特の丸みを帯びているのが魅力的だ。手足も小さいし、あまり女性らしくないと感じる印象なのに時に感じるのがまたいいと思うんだ。とにかく、僕は君が好きだ」
「は?」
「君が好きだ」
……………おかしい。ちょっと待て。いや、もうどこから突っ込んだらいいのかもう分からない。なんかもう無表情で何を言ってるんですか、とか…いや別にいいんだよ。赤司くんが告白するときに無表情だろうがなんだろうが。って、違う表情がどうのとかじゃなくて、なんか文脈おかしくない?いや、違う違う文脈どころじゃない。もうおかしい。おかしい!
「あの……」
「何?」
なんだか目の前にいる赤司くんに慄いてしまって直視できない。チラチラと様子を伺えばこっちをガン見している赤司くんと否が応でも目がある。そうは言っても何も始まらないで私は決意した。これを聞くのは私としても恥ずかしいし、自惚れんなよとも思うのだけれど、赤司くんは念押しに2度も好きだなどとのたまってくれているのでこちらも思い切って聞こうと思う。よし。
「それってさ、つまり、私の体が好きってこと?」
「そうだね」
即答!!!!!!え、体目当てってこと?……ちょ、私の知ってる体目当てと違う……!というか、それを言って何になるんだ。だから付き合って下さいってノリとは違う気がする。そう思って少し黙っていると案の定赤司くんが口を開いた。
「ただ1つ、君にお願いがあるんだ」
「……?」
「このために、僕は君を呼びとめた」
はて、何を言うんだと思いつつ、その内容こそ見当がつかないけどとりあえず嫌な予感しかしない。第6感がびしびしやばいって言ってる気がする。
「君は本当に魅力的だ。まさに僕の好みそのものなんだ。だが、少しだけ筋肉をつけてもらいたい」
「は?」(2回目)
「もう大学生にもなって肉体も成熟しきったしそれはとても魅力的だと思う。ただ、中学の頃君に魅かれたのはその肉体にうっすらとつく筋肉がより一層その魅力を惹きたてていたのも事実なんだ。アスリートのように、とまでは言わない。頼む」
おいおいおい、あの赤司くんが必死の形相で頼む、とか言わせちゃう私一体何者(笑)
(笑)とか言ってる場合じゃないけどね!
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