GandC | ナノ
09

バイトとか授業の都合で、ここのところ一週間くらい赤司くんの家に行っていなかった。少し運動を始めると、一週間動かないだけでなんだか体が重い。やっぱり本当は毎日少しずつってのが理想的なんだなぁ、と実感していたりする。もちろん行けないことは赤司くんには連絡済。今日は少し遅くなってしまったけど、久しぶりに赤司くんの家を訪れた。ちなみに赤司くんはバスケの練習があるそうで家に帰るのは遅くなるそうだ。ジムに入ると、いつものようにホワイトボードにメニューが書いてある。あ、ランニングのメニュー軽くなってる!



***


赤司が家に着く頃には日付が変わろうとしていた。さすがにもうみょうじさんも帰ってしまっただろう、と時間を確認しながら家に入る。ここのところすれ違いでなかなか会えていなかったからトレーニングの様子を見たり、今の状況をちゃんと確認した上で調整メニューも組みたかった、というのが赤司の本音だ。かと言って自分の都合で練習を休むわけにもいかず結局また彼女には会えずにいる。仕方ないと割り切りながらも、いるはずもないジムへ視線を送る。

灯り…?

苗字さんが消し忘れたのだろうか。なんにせよ電気を消そうと赤司は足を進めた。静かな廊下にカチャリ、とドアを開ける音だけが響く。

「苗字さん!?」

視界に飛び込できたのは、とうに家に帰っているはずの彼女がストレッチ用のマットに横たわる姿。らしくもない声を上げてしまったことに赤司は気づいていない。

「苗字さ……ね、てる…?」

「……んー」

ほっと息をつく。体調を悪くしてしまったのではないか、そしてそのままここで苦しんでいたのでは、と嫌な考えが頭を過っていたのだ。それも杞憂に終わった今、彼女一体いつからこうしていたんだ、と安堵から若干の呆れを含む溜息に変わる。まだジャージ姿なのを見ると、メニューを終えてそのまま寝てしまったんだろう。きっと体も冷えてしまっている。

「苗字さん、苗字さん。起きて」

「あ、かし……く…………っ!?!」

赤司の呼びかけに案外すぐに目を覚ましたなまえは、すぐに状況を理解したようでさっきまで眠っていたとは思えない勢いで飛び起きた。あわあわ、と口を開けては閉めしているけど、残念ながら言葉になっていない。

「あの、わた…えっと……」

「とりあえず、シャワー浴びてきたら?体が冷えてしまっているだろう?」

でも、とまだもごもごと口ごもっていたので、にっこりと笑って赤司はそのまま部屋を出た。どうしようもなくなった彼女は、きっとシャワーに行くだろう、と。そういう意味での笑みだ。自分も着替えるべく赤司も自室へと足を運んだ。



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