愛が積もる


「おなかすいた」

これだから男子は。ご飯を済ませてきたと言ってたくせにしばらくするとこれだ。食べてきたんじゃないのか?ん?こっちも見ずに言うだけ言って無言なのはなんなんだ。はっきり言うまで私は何もしな、

「何か作って」

「…食べてきたんじゃないの?」

「でも、おなかがすいたんだ」

しれっとこいつは…。どうせパスタだの腹にたまらないものを食べたんだろう。仕方ないから適当に何か作りにいくことにしよう。チャーハンでいっか。私も小腹がすいたしついでに食べよう。ただのチャーハンって気分でもなく、ちょっと凝ってみたいりしてあんかけにしよう。私が好きだから。先にあんを作ってしまおうと手早く準備する。自慢ではないけど手際だけはいい。味はそうでもないと思う。普通。めっちゃ美味しいわけでも食べれないほどまずいわけでもないっていう自己評価。

「って、うわ!びっくりしたいつからいたの!」

「今」

玉ねぎを切っている途中で目が痛くなってきたから中断して海老を解凍しておこうと冷凍庫を開けようとした時だった。気配もなく背後に赤司がいたから驚かないはずがない。てゆうか包丁持ちながら普通に振り返ったり、と結構危ない動きをするからそういうのやめて欲しい。

「もうできるか?」

「え、あぁまだちょっとかかるけど。今始めたばっかだし」

「ふーん」

それだけ言ってじっと見ている。なんか、やりづらいな。調理してる時って我ながら荒い自信あるし。

「苗字はすごいな」

「…赤司料理できないもんね」

「適材適所だ」

「私だってそんなうまくないよ」

「名前の作るのは美味いよ」

私の料理なんかよりよっぽどいいもの食べて育ってきたくせに…。さらっとそういうこと言うから、変に反応してしまったらおかしいかなとか考えてしまって何も言えない。作ったものを美味しいといってもらえるのは素直に嬉しい。そんなことをしながらも手は止めずに動かして、あとは炒めてしまうだけ。まだ?とまるで子どもみたいに聞く赤司がなんだかかわいくて、お水とスプーン運んでおいてねー征ちゃーんってわざと子ども扱いしてやった。




(それいい)
(なに?)
(征ちゃんって)
(実渕さんが呼んでたじゃん)
(お前の声だからいい)
(………)


((これだから赤司は!))