疲れちゃったんだ


※現パロ?とにかくブラック家とかそういうのと関係ないお話が書きたかった!レギュラスが定時上がりの旦那or恋人なイメージ。ヒロインが遅い帰りが常。








「ただいまー」

ガチャン、とドアの閉まる音と一緒に疲れも含まれた名前の声が少し遠めに聞こえる。夕飯の下ごしらえだけ済ませておいたから調理に取りかかろうと今まで読んでいた本を閉じる。僕がキッチンへ向かうより早くリビングのドアが開いてやっぱり疲れた様子の名前が顔を出した。

「お帰り」

「んー、疲れた」

「すぐにご飯作りますよ」

「うん、ありがと」

荷物をおいてぼふんとソファに沈む。あ、これは出来あがるまでに寝てるパターンだな。そうは思ってもいつもより疲れているようなので咎めることもできない。とりあえずすぐに夕飯を作ってきてしまおう。







「やっぱり」

料理を終えてリビングに戻ってきてみれば、出て行った時と同じ格好でそのまま眠ってしまっている。しかもジャケットを羽織ったままだ。紫波になってあとから騒ぐのは自分なのに。

「名前、」

「名前、起きてください」

軽く声を掛けただけでは起きてくれない。この短い間に熟睡してしまったのかと思うと逆に吃驚する。また名前を呼びながら体を強めに揺するとようやく反応が得られた。

「ん、」

「夕飯ができましたよ。それとも先にお風呂に入ってきますか?」

「んー」

これは珍しい。もともと寝起きの悪くない彼女がこんな風になっているのを見ることはあまりない。少ししてからうっすらと目を開けて、ねむい…と舌ったらずに呟いた。

「相当疲れてるんですね」

「ん、ちょっと、大変だった……、仕事」

「そうですか」

このままではまた眠ってしまいかねないのでゆっくりと彼女の体を起こす。それでもやっぱり頭が少し揺れていて逆に起こそうとしている自分が忍なく思えてしまう。すると急に彼女が腕で伸ばしてそのまま僕の背に回す。ぎゅーっと弱々しくも、確かに抱きついてくれているのは、普段よりずっとしおらしい印象だった。

「疲れちゃった…充電…」

「もう…せっかく作ったご飯が冷めちゃうじゃないですか」

もう少しだけ、寝かせてあげよう。ぽんぽん、とあやすように背中を叩いていると規則的な寝息が聞こえてきた。僕の胸に顔をうずめている彼女の顔を少し無理に起こして、音もなく、額に口付ける。

「無理は、しないで」