結論からして言えば、先輩方からの呼び出しが多発している。そのうち引くだろうとは思うし、放課後とくに用事があるというわけでもないので別にいいっちゃいいんだけど、目を吊り上げたおっかない先輩たちに対峙してるくらいなら帰って昼寝の1つでしたいっていうのが本音。週に1,2回呼び出されるし呼び出しした先輩に校内で睨まれる。実際生徒数も多いし校舎も多い。挙句の果てにそこまで呼び出しをかけてきた先輩の顔を逐一覚えていないんだけれども、凄まじい勢いでガンつけられれば否が応でもわかってしまった。


「はー…」

「みょうじさん、大丈夫?」

「え?」

授業の合間の休み時間、ぼーっとして思わず出た溜息に通りすがっただけのクラスの子に声をかけられた。大丈夫っていうのは、その溜息のこと、なんだよね?

「なんか、女子の先輩に呼び出されてるの見たって子が結構いて…大丈夫かなって…」

「あー…」

まさかそんなに広まっているなんて。と、いうかこうして声をかけてくれたのがすごく嬉しい。相変わらず赤司とは一緒にいるけれど、席が近くの子とかは休み時間に新発売のお菓子をくれたり、この子も体育のときとかはいつもグループにいれてくれたり、とすごくいいクラスメイトたちなのだ。今だって、こうして心配そうにしてくれている。

「大丈夫だよ。私は谷川さんがこうして心配してくれたことが嬉しい」

「もう、みょうじさんってば!そういうんじゃなくて…!」

思ったことをそのまま言っただけなんだけど、なんだかおもったよりオーバーリアクションが返された。「何かあったら言ってね、」と控えめにいって席に戻ってしまった。あと3分ほどで授業が始まる。

「男前だな」

「は?」

気が付けば後ろに赤司が立っていた。いや、なんで後ろに立ってるんだよ。席着けよ。

「さっきの谷川さんとのやりとり」

「そう?」

「あぁ。ところでみょうじへの嫌がらせまがいのことが増えているらしいけど」

「お、おう」

前は軽口で話題を逸らしたけど今回はそんなこともせずにさらりと本題に突入してきやがった。まぁでもすぐ授業始まるだろうし…。

「僕が止めようか」

「え、いいよ」

「は?」

「だって、赤司が口出したら私が赤司に守ってもらってるみたいじゃん。彼女じゃあるまいし。私は赤司とは対等でいたいと思うよ。それにこれくらいのことでへこたれるようじゃ、この先赤司と付き合ってられないんじゃない?」

まぁ、これが本音なのだ。私が言いたいことだけ言ってタイミングよく先生が入ってきた。きりーつ、という間延びした号令とともにガタガタと立ち上がり、私たちもそれに従う。一瞬赤司がぽかんとした顔をしていたけど、それもすぐに前を向いて見えなくなってしまった。

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