「みょうじ」
「何?あ、ポッキーいる?」
「いらない」
早弁まではしないけれど育ち盛りなのでまだ2限終わりだけれどおなかがすいてしまうのは致し方ない、とポッキーの箱をまさぐっていたところに赤司が話しかけてきたものだからてっきり食べたいのかと思って、寛大にも分けてあげようかと思ったのにこいつ…。
2本一気に口に含んでいたら真ん中ら辺からぽっきり折られた。しかも食べられた。なんだよいるんじゃん。
「昨日の放課後何をしていた?」
「え、昨日?先輩と一緒だったよ」
「なんて人?」
「え、何赤司、私が誰といようと勝手でしょ。もしかして私のこと好きなの?やだーもー困るわー」
「みょうじ?」
「すいません調子乗りました」
にっこりと笑うのは反則である。めっちゃ怖い。てゆうかなんで知ってる。昨日の放課後、というのは赤司は一生懸命部活に取り組んでいたはずだ。対する私はいつもぶらぶらと遊びに行ったり直帰して惰眠をむさぼった後にテレビを見たり、とまちまちだ。それなのに、なんで昨日のことに限って聞いてくるのか。そう、昨日というのは、実は私は先輩に呼び出されていたのだ。それも美人で怖い感じの女子の先輩に。部活にも所属していない私に先輩の知り合いなどいない。目的ってのはあれだ、「あんた赤司くんのなんなの?」っていう。勘違いも甚だしい。確かに赤司はあまり女子と話をしないし、というか関わらないから私が唯一そういう風に勘違いされるのも仕方ないのかもしれない。でも、私からしてみれば私としか関わらないし、赤司はむしろホモなんじゃないかと思うくらいなんだけど、そんなことを主張したって「あんた何言ってんの」と一蹴されてしまったのだ。暴力を振るわれた、とかそういうのでもないし、ただ圧迫面接みたいにじわりじわりと押し問答を繰り返すだけで本当に面倒くさかった。一体どうしたらこれは終わるのだろうかと内心途方にくれてしまっていたところだ。いっそのこと手を出してくれさえしたら私だって正当防衛ができるのに、と歯がゆい思いまでしていたのだ!
「で、何があったのかな?」
「赤司くん、いい?女の子には秘密の1つや2つあるものなんだよ。そして、それに気付いても気づかないふりをしてあげるのがモテる男の秘訣だよ」
「彼氏がいたこともないやつにモテる秘訣もなにもないだろ」
「なんで知ってるの!?え、てゆうか馬鹿にしてる!?」
そもそも赤司こそ、あれだけ女子生徒に人気だったというのに誰かとお付き合いしているという噂を聞いたこともなかったんだけど、そういうことはあったんだろうか。私はてんで興味なかったけど赤司ファンの友人が聞きたくもない情報を垂れ流しにしていたのでこれは確かだと思う。やっぱり赤司はホモなんじゃないだろうか。
「みょうじ、今何考えた?」
「もー、赤司、さっきから私の行動いちいち気にしすぎ!お前は私の彼氏か!」
「え、ごめん、無理」
「おい、マジレスすんな」
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