「赤司君ってかっこいいよねー」

「わかるー」

「でも厨二っぽくない?『くっ…僕の左目に秘められし力が…』とか言い出しそう」

と、冗談半分本気半分で言ったら、赤司信者である友人たちに大ブーイングをくらったのは言うまでもない。トイレ行ってくる!と言うまでブーイングの嵐が止まなかったのだから恐ろしい。よもや友人がそこまで信者になっているとは思わなんだ。赤司君…恐ろしいやつ…絶対に関わらんどこう…(関わる機会もないだろうけど)…と胸に誓ったのが中2の夏であった。そして翌年、同じクラスに、なんてこともなく私は無事に中学を卒業した。

完全に私の頭の中に赤司君なんてものはなかったし、どこにでもいる高校1年生同様、新しく始まる生活に期待を不安でいっぱいであった。しかし、その高校の教室にて、現在、私の前には見間違えるはずのない鮮やかな赤い髪が視界全面を覆っているのである。どうしてこうなった。なぜだ。こうして私が混乱状態に陥っているなど誰もわかるはずもなく周りはがやがやと新学期特有の騒がしさに包まれていた。

ところで、私は今京都にいる。親の仕事の都合上、祖母の家から高校に通うことになったわけで、幸い頭もそう悪くなかったのでこの洛山高校に進学したわけなのであるが、甚だ疑問なのが目の前のこいつである。なぜ!KYOTOにいるのか!?

とにかく私は混乱していた。入学式のときになんかそんな名前が聞こえたので赤司ってそんなよくある苗字だったか、と思っていた私をぶん殴りたい。せめてその時に気が付いていれば今こんな思いをせずに済んだというのに。

でも、待てよ。落ち着け。彼は、中学の頃、頭脳明晰、品行方正、眉目秀麗、スポーツ万能、しかも全中三連覇したバスケ部の主将をつとめたある意味で有名人だ。一方私は、「あれ、名前って高校どこ行ったの?」と今更言われててもおかしくないくらいモブ中のモブ。もしかしなくとも、赤司君は私のことに気付かないんじゃないか。このまま初めましてのノリで、っていうか本当に初めましてなんだけど、そういう感じでいけるんじゃ

「みょうじさんって帝光中だったよね?」

いきなり振り返った赤司君にさっそく打ちのめされた高1の春。


← |