先輩たちからのお呼び出しは、飽きたのか少しずつ減っていった。それでも私と赤司の仲を勘ぐる奴らは跡を絶たず、その矛先はだいたい私にくる。赤司にそういう話振るの嫌だからって、てめぇら…!

「赤司もさ、もう少し他の女子と喋りなよ」

「避けているつもりなんてないよ」

「いや、なんかこう…威圧感あるじゃん?女子はそんなのに寄りつかないよ!」

「別に寄りついて貰わなくていい」

「そうじゃなくてだね」

論破〜はい論破〜。くそ、赤司に口で勝とうなんて100年早いようだ。それでも私たちの普段のやり取りを知っているせいかクラスの子たちはそういった誤解はもうしていないようだし、むしろ赤司とも普通に関わっている。それなのになぜ私ばかり!と言いたいところだが移動教室とかもなんだかんだ一緒にいたりするしそういう些細なことなんだろう。赤司が普通に対応できる奴だと知るとクラスの男子なんて積極的にやれ宿題見せてくれだの、次ここ当たるから教えてくれだの、別の意味で赤司教が生まれそうである。もちろん赤司が宿題を見せてやるなんてことはしない。いつも通り虫けらを見る目でお断りする。そして女子がそれをきゃー赤司様のその視線素敵―と冗談半分に言うからうちのクラスまじ楽しい。

ただし赤司がガチで機嫌が悪い時にそんな茶番を繰り広げることはできない。そしてなぜか私がその察知係になってる。私が赤司に話をする様子を窺ってけしかけてくるのだ。ほんと、このクラスよくできてるよもう。

そんな毎日を過ごす中、赤司が部活のミーティングで昼がいないということで私はまた女子の皆に混じって昼食を食べている。ほんとはこの中できゃっきゃしていたかったのに。もう諦めたけど。すると唐突にクラス一、いや学年一も争うといえる美人の工藤さんが

「みょうじさんって本当に赤司くんに大切にされてるのね」

とくすくす笑いながら言うのだ。え、このクラスまだそんなの蔓延ってたの?と思った矢先、
「さっきね、赤司くんとすれ違ったから今日はみょうじさん、私たちと昼食食べるからねって声を掛けたの」

そこで区切ってまだくすくすと笑っている。なんだか変だ。こう、前みたいなお気に入りはいいわねぇ〜とかそんな陰湿な感じじゃ…っていうか工藤さんガチ笑い始めたんだけど!

「そしたらね、赤司くん、そうか、としか言わなかったんだけど、すっごい不服気なのが顔に出ててね」

まじで、あの赤司が?確かによく見ると結構分かりやすく顔顰めたりするけど。

「私もすぐにわかっちゃうくらいよ。自分の1番の友人が他の子と仲良くするの、気に食わないんだなって」

おかしい、と腹をかかえて笑う工藤さん。え、何それ、赤司そんなのもろ顔に出してたの。馬鹿じゃん、くっそかわいいとこもあるもんだなぁ。私にそれを見せろよ。

その話を聞いてまた周りが、

「えー、赤司様のそんな顔見たかったー!」
「私は赤司くんとみょうじさんは兄弟にも見えるなぁ。実はみょうじさんが姉」
「わーそれうける!」

とか好き勝手なことを言っている。まぁ、私が姉なんは悪い気はしないな。顎で使ってやるぞ愚弟よ、なんて考えたところでガラリ、とドアの開く音。

「みょうじ。部活で使う資料作成手伝え」

「おい、帰ってきて早々なにそれ。部員でやってよ」

「暇そうにしてるからな」

「ご飯食べてるのが見えないのデスカ!?」

「何ちんたら食べているんだ。いつもなら5分で空にしてるくせに」

「うるさいよ!」

確かに工藤さんのようになんか、こうイライラしているというよりは拗ねているみたいだ。ふふん、仕方ないなお姉ちゃんが構ってやんよ、という上からのスタンスで腰を上げる。

「何にやにやしてるんだ」

「んー、良いことがあったんだよ」

「…そうか」

「知りたいんだ」

「別に」

「赤司と友達になれて良かったなって思ってたの」

「……当然だろ」


照れてる。

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