……びっくりした。誰もいないところに誰かが来たってだけでもびっくりしたのにそれがキャプテンだなんて。居眠りしていた罰か!でも案外普通に話せたし大丈夫、かな。忘れ物を取りに来たって言ってたのにキャプテンは何かを取る様子もなく出て行ってしまった。それとも外に忘れ物?まぁ、いいか。とにかくこれを早く終わらせて帰ろう。宿題やってないし。

ガチャリ、とまたドアの開く音。キャプテン、かな。さっきから何してるんだろう。忘れ物見つからないのかな?手を止めて振り返ると予想外にもキャプテンがすぐ近くにいてまたびっくりした。(心臓に悪い日だ…)

「手、出してみろ」

「え?」

キャプテン、顔が無表情です。怖い。とりあえず言われた通りに手を出してみるとキャプテンはポケットから何か取り出して私の掌に乗っける。

「…これ」

「差し入れ」

缶コーヒーだった。…もしかしてこれを買いに行ってくれていたのかな?いやいやいや自惚れんなよばか調子乗るなよばか。

「あ、ありがとうございます!」

ふって軽く微笑むキャプテンはいろんな女の子が言うように確かにかっこよかった。

「でも、キャプテン…」

「?」

「私、コーヒー苦手なんですよねぇ」

「それミルクコーヒーだぞ」

「だめなんです」

「お子様様だな」

はは、って笑われてしかも子ども扱いされてなんか腑に落ちないけどそれでもなんか嬉しかった。

「眠気覚ましになるだろ。ちゃんと飲めよ」

「うぅ…」




結局キャプテンは最後まで一緒にいてくれてぽつりぽつり話をしたりして、気づいたらすっかり日は暮れてしまっていた。

「では、キャプテン今日は付き合わせちゃってすいませんでした」

「いや、別に…」

「お疲れ様です」

「おい」

「?」

さぁ、早く帰ろうとキャプテンに背中を向けた瞬間すぐに呼びとめられた。なんだろう、キャプテンももう早く帰った方がいいんじゃないかな。明日も練習休みなわけじゃないのに。

「もう日も暮れてるんだぞ?」

「そうですね」

「…全く。女の子1人で帰すわけに行かないだろ」

「え、いや、でも」

「家、こっちだっけ?」

「うあ、はい、でも」

「行くぞ」

「あぁ、待ってくださいよ!」





家までは今日の試合の話ばっかりした。
玄関先でキャプテンは前のことを謝ってくれた。
もちろん私も謝り返した。
お互い謝ってばっかりでなんかおかしかった。
それから、

「いつもありがとな」

キャプテンは額にキスをして颯爽と帰っていった。



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