FFIはイナズマイレブンの優勝で幕を閉じた。あっという間に時間は過ぎて、もうあれは夢だったのではないかと思うくらい普通の日常。しばらく試合はないから、個人のトレーニングやあまりない組み合わせでミニゲームをしてみたり、と余裕のある練習をしている。それはそれで面白いけどあの、試合が少しずつ迫ってくる緊張感と興奮の混じったわくわくに比べれば、と思わずにいられない。はー、早くまた試合とか大会とかあるといいなぁ。

あ、キャプテンだ。

「調子はどうですか?キャプテン」

「あぁ、なまえか。やっぱりカズヤがいないのは大きいからな。今までとは違うフォーメーションを試したりしていたんだ。」

「あ、だからさっきキャプテンが結構下がった位置にいたんですね!あれじゃユニコーンブースト打てないなぁって思ってたんですよ。」

一之瀬は試合後すぐに手術を受けた。とにかくサッカーを出来る状態じゃないし復帰とかもどうなるのか私には詳しく分からないけどそれまでは一之瀬抜きでのチーム作りをしなくちゃいけない。監督はもちろんキャプテンもいろいろと考えるところが多いんだろうなぁ。一之瀬が抜けたことは大きいけど逆にチームの新しい可能性を探せるのも事実だ。皆がいろんなフォーメーションやったり、ポジション変えたりしてプレイしているのを見るのは実はとても楽しい。

「それより、お前またゲーム見てたのか?」

「あ、いや、その…」

「仕事は順調なんだろうな?」

にこりと笑うキャプテンの目は全然笑っていない。そして私は全然過去に学んでいない。

「これから、ドリンク作りに行きます…」

「もう休憩前のダウンに入るところなんだけど」

キャプテンのこめかみがピクッと動いたような気がした。

「すぐに作ってきます!」



仕方ないやつだなって困ったように笑いながら猛烈ダッシュする私の背をキャプテンが見送ってくれていることも知らず、私はドリンクの粉の残りが少なくなっていることを思い出してキャプテンにだけはバレないよう他の人のを薄いので作らせてもらおうと画策しているのだった。



prev next