負けた。イナズマイレブン、ジ・エンパイア、どちらとも不完全燃焼なんて言い訳できないくらい、良い試合だった。だからこそ、悔しい。力いっぱい、全力で戦ったからこそ、こんなにも悔しい。分かってる、これが今俺にできる全てだってこと。でも、ただ1つ言うとするなら…、カズヤだ。俺は、誰よりも早く気付いてやるべきじゃなかったのか?キャプテンだから、なんて簡単な言葉で片付けるつもりはない。もちろん、カズヤがイナズマイレブンとの試合に相当な気持ちを込めていることには気づいていた。何度もフォーメーションの調整や、いくつかの攻撃パターンの練習、それに守備の連携まで一緒に確かめ合った。本当にカズヤはすごい。1番カズヤが輝くのがMFだとは思うが、どのポジションにいても不安はない。器用にこなしてみせる。だからこそ別格視していたのかもしれないな。あんなに、一緒に共に時間を過ごしたって言うのに。それに、なまえも。あんなに俺たちのために頑張ってくれていたのに。俺があいつに何かしてやれることなんて言ったら、試合に買って喜ばせることくらいじゃないのか?

もう何度も似たようなことを繰り返しぐるぐると考え続けている。わかってるんだ、こんなことは無意味だと。それでも、どうしてもやるせなくて、俺は部屋から出られずにいた。いつもはドア越しにガヤガヤと賑わいが聞こえてくるほど、誰かしら騒いでいるのにそれが嘘のように静かだ。それがまた、嫌だった。

あぁ…でも、やっぱり、サッカー…したいな・

また眠ってしまおう、と目を閉じたその時だった。

「キャプテンッ!」

「なまえ…!」

バタン、と盛大に開けられたドアにはなまえが仁王立ちして立っていた。もちろんそのまま立ちつくしているわけでもなく、ずんずんと効果音が付きそうな勢いで向かってくる。

「何してるんですか、夕飯抜く気ですか!?昼も食べなかったくせに!選手が体調崩したらだめなんですからね!」

「分かってる、すぐ、行くから」


あれほど、俺に対してびくついた姿勢の#NAME1#にこうも捲し立てられて、俺は若干焦っていた。一瞬だけど、試合のことも吹っ飛んだ。ぽかん、とただ行く旨だけ伝えればそれからなまえはさっきのが嘘みたいに大人しくなる。ここまで走ってきたのか、大声を出したからか、分からないが肩で息をしていた。顔は下を向いている。

「終わりじゃないです」

「なまえ…?」

「まだ終わりじゃないですよ!これからまたいろんな大会があるしキャプテンならプロとかにもなってもっともっと活躍するだろうし、」

「何を言って…」

「だからこんなことでへこたれないでください。いつものキャプテンでいてください」

本当にさっきのが嘘みたいだ。だんだんか細くなっていく声。顔を上げて俺を真っ直ぐ見るなまえの目はひどく真っ赤に腫れていてあぁ彼女も泣き腫らしたんだなってすぐに分かる。ひどい顔だ。涙と鼻水でぐしゃぐしゃだし、その鼻は真っ赤だし。

「そう、だな。いつまでもこんなうだうだしてたら格好悪いもんな。なまえだって泣きやんでるのに」

「な、私は、別に泣いてなんか!」

「その顔で言うのか?」

「う…」

「ありがとう」



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