ネズを胸にたずさえて




めちゃくちゃ早く目が覚めた。しかもやけに目が冴えて眠れない。めちゃくちゃ早くっでどれくらいかと言うとなんと4時だ。さすがに起きるのもな、と思ってしばらくもぞもぞしていたけどさすがに飽きてしまったし、こうして起きてきて紅茶を飲んでる。別に好きでもないけど、もし天気が良ければ散歩に出てもいいなと思うのに生憎の雨だ。天気も薄暗くしとしとと静かに降る雨の音は、眠気を誘うにはもってこいなのに、これまた眠くならないから不思議だ。

「名前?」
「ひっ」

完全に自分一人の世界だったところに突然侵入者有りだ。いや、そもそも共有スペースなんだから侵入者もなにもないんだけど。

「びっ……くりした……ブチャラティか。気配殺さないでよ」
「そんなつもりは」
「足音とかも全然しなかった」
「名前がぼーっとしてたんじゃないか」
「ブチャラティが言うならそんな気がしてきた」
「なんだそれ」

全然ぼーっとなんてしてなかったはずなのに、ブチャラティに言われるとまじでそんな気がしてくるから不思議だ。嘘を見抜くだけじゃなく洗脳能力まであるんだろうか。

「朝早いんだな」
「なんか目が冴えちゃって。ブチャラティこそ、早いじゃん」
「あぁ………俺は逆に眠れなくてな」
「え?嘘もう朝じゃん。眠れないとかいうレベルじゃなくない?」

ブチャラティは苦笑だけで返した。なんだ、もしかしてお疲れってやつか。これは今日1日ゆっくりさせてやらねば私が近所のおばちゃんたちに責められてしまう。

「ほら、座って」
「?」

マグにミルクとはちみつを注いでレンチン。ついでに自分の分も。

「悪いな。でもどうせ寝れないから俺も起きようかと思ってたんだ」
「いいからいいから。これ飲んでベットに戻んなよ。なんなら読み聞かせでもしてあげようか?」
「俺が寝付く前に、お前の方が先に飽きそうだがな」
「はぁ〜?」

いかんいかん、こんな軽快に軽口叩いてないでさっさと寝かしつけねば。なにこの使命感。ママかよ。いや、まぁ、でもブチャラティはね、いつも頑張ってるからこんなあからさまに疲れてるところ見ちゃうとこっちも必死になっちゃうよね。

ほんの少しだけ睡眠剤盛っちゃった。

しばらくすると、薬の効果が出てきたようでブチャラティのまぶたが明らかに重くなる。おかしいな、とかなんとか言ってるからちょっと笑いそうになっちゃった。

「おやすみ。昼には起こしてあげるよ」

夕方、ブチャラティが自然に起きてくるまで起こさなかったら、さすがに盛ったのがバレたみたいでデザート抜きになった。