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ホグワーツにいる時のレギュラスは水を得た魚のように生き生きしている。うーん、違うな、そんな躍動感はいらないんだよな。ヤクザの頭のように調子に乗っている。いやこれは言い過ぎ。そんなに柄悪くない。なんて、言えばいいのやら、少なくとも先生の前でやってる、多少のいいこちゃんは寮では鳴りをひそめている。

「レギュラス〜、マンドレイクの水やり行った?」

「…………………忘れてた」

「昨日は私が行ったんだからちゃんと行ってよね」

「……………」

「返事をしろ」

相変わらず一番前の席にいる私たちになにかと物を頼んでくる魔法薬学の先生が、1週間出張だかなんだかよくわからないけど、城を開けるからマンドレイクの世話をして欲しいと頼まれた。世話といってもほんの1週間なので水さえやってくれればいいとのことだ。まぁもちろん面倒でなにかしら言い訳を考えていたのだが、隣にいたレギュラスがにこにことyesを出してしまったのだ。無論、私はその時yesなんて一言も言っていないのに、レギュラスの返事は私の返事とみなされなぜか2人で協力してよろしく、なんてことになった。もちろんこの先生がこうした日々のゴマすりのおかげで私たちに激甘なことはもはや周知の事実だ。

「そういえば、入ってすぐの右から5,6番目くらいのやつ、埋まってるのに若干きーきー言ってなかったか?」

「言ってなかったよ」

「ならいいか」

よっこいしょと言いたげな重たい動作で腰をあげるレギュラス。返事こそしないがちゃんと水やりにいくらしい。なんだかんだ真面目なのだ。態度は悪いけど。

「あ、あと、エミリーが話したいって言ってたよ。この前も言ってなかった?」

「あー、うん。そうかも」

「あからさまに面倒くさそうな顔しない。大事なフィアンセでしょ」

大事なフィアンセ、というところがつい揶揄う声音をなってしまうのは許して欲しい。

「家が決めたことだから、どうでもいいんだよな」

「まぁ、そう言わずに両親の顔を立てなさいよ」

「はいはい」

言わないでいるが、エミリーからレギュラスの探りを入れられる私の身にもなってほしい。まだエミリーとは拗れた関係なわけじゃないけど、時間の問題な気がする。レギュラスはこんなだけど、エミリーの方は割とこの縁談にノリノリなのだ。

「じゃ、マンドレイクとのデートに行ってくるよ」

「ごゆっくり」