ローズヒップ


「はーい、どうぞー」

友達の家にいって出されたのは真っ赤なローズヒップティーだった。自分の家じゃ滅多に…いや絶対に出ないお洒落なそれを見て友達の女子力の高さを改めて感じる。かわいらしいティーカップに注がれていて、果たして我が家に1セットでもこんなものがあっただろうかと食器棚を思い出してみるけど残念ながら全く思いつかなかった。きっと母がお客さん用に片付けているのだと思いたい。


「(赤司の色だ…)」

鮮やかな赤色は赤司の綺麗な髪の色を思い出させた。香りのイメージとは全然合わないけど。いやでも案外…いや、やっぱりこんなフローラルっていうか、華やかな香りはイメージじゃないな。もっとこう…スパイシーな感じ?いや、なんだよスパイシーって。そんなことを一人悶々と考えていたら百面相してしまっていたらしい。友達にクスクスと笑われた。何考えてたの?っていうからありのままを話したらまた声をあげて笑われてしまったが、それならと急に部屋を出て行って戻ってくれば何やらかわいくラッピングされた袋を手渡された。

「少しおすそ分け」

そう言ってにこっと笑う友達は女子の鏡だと思った。




「で、その友達の女子力が高いのは分かったから。」

「赤司が女子力って言葉使うとなんか面白いね」

「うるさいな」

「じゃじゃーん!その貰ったローズヒップティーを持ってきました!」

「それを早く言えよ」

友達の話を永遠とするから何をしに来たのかと思った、と文句を言われてしまった。部活があるだろうとダメ元で連絡してみたらちょうど練習が早く終わって帰宅したところだって言うからすっとんできたのだ。

「いれて」

「俺が?」

「私は下手そう」

「そうってなんだそうって。女子力上げたいんじゃなかったのか」

「せっかくもらったものをまずい飲み方はしたくない」

「……もっともだ」

え、論破?案外あっさり腰を上げて、私が手にしていた包みをひったくって部屋を出ていってしまった。いれてきてくれるようだ。しばらくしてゴン、と何やら鈍い音がドアの方からした。何事だと開けてみれば赤司がティーポットなどなどがのったトレイを両手に、ドアを蹴ったようだった。

「征ちゃんお行儀悪いんだー」

「人のベッドの上で菓子を食べた奴に言われたくない」

「あれは不可抗力だよ!袋あけたら小分けになってなくて、こぼれそうになって口に入れただけだもん!」

「はいはい」

全然聞いてない!と憤慨するも、そんなことを話しているうちに赤司は手早くお茶をいれてくれていた。どうぞ、と言われたローズヒップティーはやっぱり赤司の髪の色みたいに鮮やかでそんな2つが並んでいるとなんだか私はとても贅沢者だと感じた。

「結構酸味が強いんだな」

「あれ、赤司はこういうの飲まないの?」

「あまり飲んだことはないな」

「あ、ちょっと貸して!」

赤司のティーカップを奪いとって、そこに一緒に持ってきていた水を少し入れる。

「おい、ぬるくなるだろ。何して、」

「少し酸味がきつい、とかお茶も渋いと思ったら薄めるといいって友達が言ってたから。あともう少し砂糖入れたらおいしいかも!私もそうだったから」

適当に調節して赤司に手渡すと、結構口に合ったようで文句は言われなかった。

「本来、お湯でやるものだろう」

「いいじゃん、猫舌なんだし」

「………」

珍しいことに本日2回目の論破だ…!

「赤司も私と一緒だね」

「何が」

「私も薄めて砂糖少し多めにした方が好きだったから!」

「そうか」

「なんで不服気なの!」

「別に」

全然違うタイプの私と赤司がお揃いのところがあるって、なんだか嬉しいなぁと思いながらまた一口。友達に今度お礼しなくては。




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何を隠そうローズヒップが苦手なのはこの私です。でも上記みたいにするとおいしくいただけます。だから外では飲めませんねぇ。ハーブティーも砂糖けっこうたっぷり入れたりしてもおいしいものです!