ミルクアップル


「むっくん、はい。クッキー食べよ」

「うん」

ベッドに寝転んで携帯をいじっていたむっくんに貰ってきたクッキーを持ってきた。調理部の友達が作ったのを貰ったと言ったら食べたいとせがんできたから。いや、この話をすればこうなるって分かってたんだけど。

「あ、ちょっと待って!」

「え〜、何?」

早速手を伸ばしたむっくんを制して慌ててカップを持ってくる。少し前に奮発して買った紅茶がとてもおいしかったのでたまにはむっくんにもちゃんとしたティータイム的なことをさせてあげようと思っていたのです!

「紅茶?」

「そう、アップルティーなの」

「でも俺、あんまり紅茶好きじゃないんだけど〜」

「知ってるよ。でもこれきっとおいしいから!」

え〜、とか言って全然乗り気じゃないむっくんの声を無視してどうぞ!と彼の前にカップを置く。アップルティーにミルクを入れたもの。買った紅茶の端書に書いてあって、アップルティーにミルク?と半信半疑でやってみたら予想外においしいし、紅茶の渋みも薄れてとっても飲みやすくなったからこれはぜひむっくんにも飲んでもらわなければ!と思っていたところだった。

クッキーを食べてから、紅茶を飲む。

「ど、どう?」

もぐもぐもぐもぐ

どんだけ口にクッキー入れたのよ、と思うほど一生懸命口を動かしていて、これ紅茶の味ちゃんとわかったのかな、って不安に思ってしまう。てゆうか試しにクッキー食べる前に飲んでよ!

「ん〜、これなら飲めるかも」

「ほんと!?やった!」

「なんで名前が喜ぶの?」

「好きなものは好きなひとと分かち合いたい、から?」

「ふ〜ん」

納得したのかしてないのかむっくんの視線はまたクッキーに。でもなんかこう、紅茶好きじゃないって人の、少しでも好きな紅茶を探すのって楽しいかも。なんかゲーム攻略してる気分。そうして一人うきうきしていると、「ねぇ」と声が掛けられた。

「じゃあ、はい」

「んぐ!?」

「俺も、好きなものを好きなひとと分かちあってあげる」

半ば無理矢理クッキーが口に押し込められてちょっと苦しいんだけど!抗議することもできず、かと言って今しがたむっくんがさらりと言ってのけてくれたことが嬉しくて私も一生懸命もぐもぐと口を動かすのだった。それ、私が貰ったクッキーなんだけどね。



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ものに寄るかもしれません。いろんなアップルティーで試したことはないので。
カルレチャペックという紅茶のアップルティーでやったんですけどとてもおいしくて新境地でした!