嵐の前の沈黙
昨日の今日、まさにそんな感じだ。まだ1日と経っていないというのになまえの様子は明らかにおかしかった。いつもの適当に、まさにニートを感じさせるふわふわした雰囲気を感じさせず、鬱鬱と過ごしていることが誰が見てもわかる程だった。もちろん学年は違えど寮が同じである異常会う確立も高くなるレギュラスがその様子を見ていないわけではない。遠目で、決して彼女の目に触れないように見つめていた。

先に声を掛けてきたのはセブルスだった。

「レギュラス、昨日のあれはどうしたんだ。」

「どうって、思ったことを言ったまでですよ。」

「そうは言っても、もう少し…言い方があったんじゃないか。」

なまえの行動が常識から多少なりとも外れていることは間違いないためレギュラスを責めることはできない。むしろ自分があんな目に遭っていたら早々に彼女を怒鳴りつけていただろうと思いながらも、なまえがレギュラスといて1人楽しそうににこにこ…いやにやにやしているのを見るのは嫌いではなかったと、自分の中で言い訳をする。他人事だからそんなことを言えるのだと、レギュラスに反論されると思うと口にはできない。目の前の後輩は昨日と同様どことなく奇妙とも言える雰囲気で、しいて言うなら「スリザリン」っぽい雰囲気で微笑んでいる。狡猾で、自分の欲しいものは何がなんでも手に入れる、そういう雰囲気を感じさせた。

「大丈夫ですよ。セブルス先輩は気にしないでください。」

そう言われてしまえばこれ以上何も言うことができずセブルスは次の授業へ向かうべく寮を出た。







そして数日、なまえは分かりやすいようにレギュラスを避けた。朝食の時間を把握して以前は共に過ごしていたが、逆に今は完璧に会わないように考えて大広間に向かう。それまでほぼ完璧と言えるほどレギュラスの動向を把握していたために避けることは容易だったようだ。しかし、もちろんそれをレギュラスも分かっている。わざと自分の行動パターンの型から外してなまえに会うこともまた簡単だった。

「あ」

「……」

寮の扉が開いたために自然と顔を上げればそこには間の抜けた顔をして、間の抜けた声を出したなまえの姿。それを見てレギュラスは薄く笑う。

「や、やぁ!」

それだけ言って通り過ぎようとレギュラスが座っているソファを避けて足早に突っ切る。しかしレギュラスもすぐに立ちあがり彼女が女子寮に逃げ込んでしまう前にその腕を捕えた。なまえは立ち止まっても決してレギュラスの方を向こうとしない。おかしな沈黙が続き、レギュラスの手には掴んだなまえの腕の脈拍が感じられる程だった。


prev next

Love like a shadow flies when substance love pursues,
Pursuing that that flies, and flying what pursues.
(The Merry Wives of Windsor / William Shakespeare)