「セブルス、どうしよう」
「後にしてくれ」
「レギュラスが好きすぎて辛い」
最近のなまえは口を開くとこれだ。どうも少し前から僕に向かってレギュラスレギュラス言ってくるようになったのだ。以前ならば何も考えずに本人に突っ込んで行っていたというのに。そもそも僕に恋だのなんだのと言ってくることがおかしいということに早く気付いてほしい。
「ねーレギュラス今どこ行ったと思う?」
「さあな」
「図書館だよ!いや、いつものことなんだけどね。私がいるとうるさいだとうと思って自重したんだけどね。でもね、やっぱりあのレギュラスの伏せられた瞳とか少し疲れて眺めに瞬きしたり首を回したりするしぐさとか足を汲み直す瞬間とかそういうの見たいんだよね。見つめていたいんだよね。あーーーーー」
「こっちがうるさい!そんなに言うなら行けばいいだろう!」
「だーかーらー、レギュラスに嫌がられるかと思って自重してるんじゃん!」
この馬鹿が…!これでは僕が落ち着いて読書も勉強もできない。なまえもなまえで不貞腐れた顔をしてまだうだうだ言っている。つまらないのなら不貞寝でもしていて欲しいものだ。しかも、こうして話してくるということはとにかく聞いてもらいたいのだろう。どうして僕がこんな役回りを…と思わずにはいられないが致し方ない。今だけ我慢して安息な時間を手に入れよう。
「そもそも、どうしてそんな自重をしているんだ」
「セブルスしつこいな。レギュラスに嫌われないようにってさっきから…」
「以前はそうではなかっただろう」
「う、」
「レギュラスが嫌がろうが何がなんでもひっついてちょっかい出していたのはお前だろう。それが今更何を言っているというのだ」
図星のようであからさまに視線を逸らすなまえ。だが、以前と違う様子に自覚はあったようだ。それなら話は早い。
「で、お前は何を気にしているだ?」
「うー…あー…、えっとぉ…」
「早く言え」
「だって、セブルスに恋する乙女の気持ちが分かるんですか?」
「分からんな」
「ほら!だから言いたくな「さっさと言え」
がし、と奴の頭を掴む。これ以上このくだらない問答を繰り返したところできりがない。事は迅速に終わらせなければ。というか、もうレギュラス早く戻ってきてくれ…。
「あのですね、ちょっと前にレギュラスがイケメンで紳士で頭も良くて貴族の御曹司で性格もクーデレでもう完璧であることを再認識しまして「惚気は聞いてない」あ、すいません。聞いてください。で、だからね、他の女の子ももちろん『レギュラスイケメン!きゃー!』ってなるじゃん。さらには私なんかよりかわいい女の子もいっぱいいるしもうなんか私猪突猛進に突っ込んでいってたけどそんなのレギュラスに嫌われるに決まってるじゃんどうしよううわああああああああああああああああ」
「分かったから!うるさい!」
「ずみ”ま”ぜん”…」
無理矢理言わせたにせよ、こうまで一気にまくしたてるとは…。つまり自分の中で頭の整理はできていたのだろう。で、どうするか、か。レギュラスがどう思っているのか分からない限り僕としても下手なことは言いたくないな。ただ僕としてはなまえが自重するのなど本当にもはや今更すぎてどうにも効果がないように思えるのだが。まぁ、いい。
「どう”じよ”う”…ゼブル"ズ…!」
「僕のローブで鼻水吹くな!死ね!」
「うわあああああああん」
「何事ですか、一体」
「「レギュラス!」」
もっと早く帰ってきてもらいたかった。
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Love like a shadow flies when substance love pursues,
Pursuing that that flies, and flying what pursues.
(The Merry Wives of Windsor / William Shakespeare)