あれから一応レギュラスにごめんね言ったし片付けもちゃんとしたし、反省してるアピールで最近レギュラスが嫌だと思われることは控えてるつもりなのに、どうやらレギュラスはまだ怒ってるらしい。私が挨拶をしても目も合わせずに淡々と返事をするだけ。いや、ちょっと、さすがに堪えるといいますか…!それにしても、そんなに女装が嫌だったのか…それとも腹の虫の居所がたまたま悪いときにちょっかい出したから…って、でもそうだったらさすがにこんなに怒んないよなぁ…。うむ、詰んだ。だって、もうすでに謝ってるんですよ!どうしろっちゅーねん!
「えー…、ごほん…ブラックさん」
「……」
「…ブラック殿」
「……」
「レギュラス・ブラック様」
「……なんでしょうか」
おうふ、卑しいものをみるような目で見られています。もうだめ、もう心折れる。いや、待てだめだ。大丈夫、いつもレギュラスの辛辣な言葉に耐えてきたもの。頑張れる、頑張れるよ!もっと熱くなれよ!お米食べろ!
「どうして、そのようにお怒りになっておられるのでしょうか?どうかこの阿呆な私めに分かるように説明を「怒ってなんかいません。それと二重敬語は慇懃無礼ですよ」
え、怒ってるよね?怒ってるじゃん!もっと熱くなれよおおおおお!
「いや、怒ってるよね!ごめんなさい、もうレギュラスが嫌がるようなことしないから!」
「だから怒ってないですって」
「怒ってるじゃん!」
「ほら!怒ってるじゃん」
「これはあなたが今しつこいから…!」
不毛な言い争いがしばらく続いて、とうとうレギュラスが折れてくれた。熱くなったよね!頑張ったよね私!とは言うものの、レギュラスの表情は晴れない。いや、私に向かって穏やかに微笑んでくれたことなんてそうないけども。
「で…あのぉ、…結局なんで怒ってたの…?」
「……」
じとり、と嫌な目で見られる。しかも盛大に溜息をつかれる。あれ、私って一応年上だった気がするんだけど、気づいたらもう完全に逆転というか、あれだ、仕事でミスした部下が上司に怒られてるの図、みたいになってる。切ない。
「…い…か…言わないでください」
「え?ごめ、聞こえ…」
「かわいいとか言わないでください!」
「……へ」
きっ、と睨みながらも顔を赤らめているレギュラス。恥ずかしいんだろう。だから言いたくなかったんだ。でも、睨んでるわりになんか顔赤いし、そこまで必死に口を閉ざすことでもないんじゃ、いやもう…
「そんなこと気にしちゃうレギュラスがかわいいよ」
言ったあとにしまった、と思ってももう遅い