「レギュたん」
「死ね」
「辛辣!」
ちょっと予想外の辛辣さにびっくりしました、はい。睨まれなかったからそう機嫌が悪いとかじゃないみたいだけど。とにかく私は昨日ねった計画を実行に移したいと思いこんなに意気込んでいるのだよ!
「でね、今日は窓拭きしようよ!」
「は?そういうのは屋敷妖精がやってくれますよ。つかこの寮に窓ありませんから」
「あ、ええと、あ、じゃ棚!棚拭こう!棚!」
「じゃあ屋敷妖精に伝えておきますね」
「いやいやたまには日頃使っている物に愛を込めて水拭きしようじゃないか!」
レギュラスが明らかに不信の目を向けてくる。確かにちょっと私の言動怪しい。でも無視無視!とりあえずにっこり笑ってみた。
「………何企んでるんですか?」
「いいじゃんいいじゃん、はい雑き…」
その時、私は気付いてしまった。私の不可解な要求を怪しむのはもちろんだけど、それ以前にレギュラスは戸惑っていたのだということを!
よく考えれば分かったはずなのに……!
私庶民だから……!
レギュラス…、雑巾とか触ったことないに違いない!
「ごめん、レギュラス 雑巾とか触るわけないよね!私の馬鹿!」
「え、いや…」
「そもそもレギュラスの綺麗な手に雑巾握らせようとするなんて…」
「ちょ、先ぱ…」
「そんなつもりじゃなかったの。どうしても腕まくりするレギュラスが見たくて」
「棚拭きくらいできますっ!」
「……え」
珍しく大きな声を出したレギュラスに思わずきゅんとしてしまったことは黙っておこう。やばい、そんな感じで罵られたいとか思ったことは黙っておこう。そしてその後のツッコミがないことから察するに、私の真の目的を暴露したくだりはどうも聞こえていなかったらしい。
「じ、じゃあ…」
「はい」
おずおずと雑巾を手渡す。
雑巾を握るだけでかわいいとか思わせるレギュラスは一体何者?やばい、なんかシンデレラとか頭を過ぎったんですけど。ぐへへ、かわいいなぁこいつぅ!
私がそんなことを考えているとは露知らず、レギュラスは用意してあったバケツに直行する。それからしっかりシャツの袖を捲って……
ベシンッ
「ふがっ!?」
ちょ、え、
めのまえが まっくらに なった
って違うよ!別に手持ち全滅とかしてないから!いやそうじゃなくて…(※なまえは こんらん している!)
「レギュラス、君?」
「なんでしょう」
「あの、これ、どうして……」
「先輩がいきなり鼻血流し始めたので気持ち悪くてつい」
「え、鼻血出てた!?うわ、私キモ!」
「同感です」
「いや、でもだからって女の子に雑巾投げつけないでよ!」
「まだ血がついてますよ」
「雑巾で吹けるか!」