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とにかく習うより慣れろ4

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先日、司法の塔では頑張っているかと総監から連絡があった。
まあそこそこだと、私はそう答えた。
すると総監は派手に笑ってから、上手くやれよなどと言う。
それからあのロブ・ルッチには気を付けろ、と加えた。
その忠告はもう遅いのだけれど。
実際、軽く目をつけられているようだし。
あとはしょうもないお話の一つ二つ喋ってから、通話が切られたのを覚えている。

「おいナマエ、聞いてんのか」
「...あっ、はい」
「コレ、いつも通りにな」
「承知しました」

書類の束を受け取り、書かれてある宛名の人物の元へ届けるだけ。
鼻を振って送り出してくれるファンクに手を振り返してから、長官室を出た。


▼△▼


「ミョウジです。書類をお届けに参りました」

ここ一週間何度も口にしたセリフだ。
そして、このあとの対応もわかりきっている。

「ご苦労」

完璧に表情を読み取らせない顔で見下げられる。
パッと私の手から書類を取り上げると、すぐに部屋へ戻る...と思ったのに。
何故か、見下げられた状態が続いている。
やはりこの人に眺められるのは苦手だ。
ジッと睨まれては動くに動けず、ああなんと居心地の悪い。

「...すみません、あの、何か」
「.........」
「...ルッチ殿」
『此処には慣れたかっポー』
「え」
『もう慣れたのかと、ルッ...おれが聞いてるっポー』

無愛想な男の肩の上。
白い鳩が羽を動かして、喋っている。
そう、まるで人間のように流暢に言語を介しているのだ。

「えっと、はい、そうですね。大分、慣れたかと」
『そうか、それは何よりだ、ポッポー』
「ありがとうございます、ハットリ」
『気にするな』

ハットリが、じゃあなと言えばルッチ殿も部屋へと戻っていった。
…はあ。
えと、今のはなんだろうか。
ありのままを伝えると、ハットリが喋っていた。
普通に対応していたが、私にだって驚きはある。
というか、驚き以外何もない。

「あの子、話せたんだ」

確かによく語りかけてくる子だとは思っていたが、まさか発声もできるとは。
未だポカンとして、暫くルッチ殿の部屋の前から動けなかった。


▼△▼


「これで満足か、ハットリ」

実に数分前の出来事だった。
ハットリから、あの女、ミョウジは自分の言葉が通じるのだと聞かされた。
言葉、と言っても語弊がある。
どうやら、思っている事が通じるらしい。
それがミョウジの能力なのかどうかはわからないが、これで合点がいった。
初めて会ったあの日、俺が教えていないはずのハットリの名を言い当てたのはそのせいだ。

「......はぁ」

意味がわからない上に、頭の痛い話だと思った。
CP0から臨時で配属されたアンドロイドのような女が、ハットリと意思の疎通ができるとは。
興味よりもやはり面倒だという気持ちの方が強い。
そんな事を知らないハットリは、部屋中を飛び回っていた。


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