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- ナノ -

とにかく習うより慣れろ1

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現在、長官室には司法の塔にいるCP9全メンバーが集められていた。
皆同様に漆黒のスーツに身を包み、白いスーツを着ている私が変に浮いてしまっている。
長官殿が、1つ咳払いをしてから言った。

「で、こいつらがCP9だ。おら、お前ら順に挨拶しろ」

ふんぞり返って椅子に座った長官殿の正面に並んでいるメンバー達が(数名面倒くさそうに)口を開いた。

「わしはカクじゃ、よろしく頼む」
「俺はジャブラ」
「フクロウだ!チャパパー」
「よよい!あぁ某は、クマドリとぉ申すなり」
「ブルーノだ」
「...ロブ・ルッチ」
「カリファよ、よろしくね」

あまりにも簡易的な挨拶だったが、顔と名前は覚えられそうだ。
それくらいメンバー全員のキャラが濃い。
いい意味でも、悪い意味でも。

「そんじゃ次お前な」

長官殿にバシッと背中を叩かれた。
この人昨日の今日で親しみ度高くなりすぎなんじゃないか。
一瞬だけそう思ったがすぐに思考を戻す。

「CP0から参りました、ミョウジ・ナマエです。よろしくお願いします」

昨日と同様、頭をさげて一礼する。
そして私が顔を上げたのと同時に、後ろから誰かに頭をもすっと掴まれた。

「!?」

よく分からないがちょっと思いの外吸われている。
上から頭を吸われるなんて初めての感覚だなんて、ううん、ところでこんな事するのは一体誰だ。
どうする事も出来ずに棒立ちになっていると、長官殿が止めに入ってくれた。
なんかまだ変な感じが残っているが、とりあえず背後を確認する。
するとそこには、見上げるほど大きな象がいた。

「おっ、ナマエおめぇファンクに気に入られたらしいなァ」
「えっ、はぁ...すみません、ファンクとは...」

そう、紛れもなくこの子は象。
しかし初めに部屋に入った時に象なんていなかったはず。
一体どこから現れたのだろうか。
再び鼻を伸ばして私の頭を吸おうとする象を窘めながら長官殿に視線だけ向ける。

「こいつは象剣・ファンクフリード。ゾウゾウの実を食った剣だ」

なにやらとても自慢げに話す長官殿。
曰く、彼にはよく懐いているらしい。
剣が悪魔の実を食べるなんて不思議な話だとは思うが、まあ一部のおかしな海軍が考えそうなことだ。

「よろしくお願いします、ファンクフリード」

そう言えば、ファンクフリードは嬉しそうにプオと鳴いた。
それに呼応するように、背後でハットリもクルッポーと元気よく声を上げたのだ。


▼△▼


現在長官室に残っているのは、4名。
ロブ・ルッチ殿、カク殿、カリファ殿、ブルーノ殿だ。
他の皆様は退室なされた。
かく言う私は基本的に長官室で待機。
窓際の隅っこに突っ立っていた。
任務内容には護衛とCP9への助力が含まれている。
言ってしまえば程のいい雑用なのだが、そんな事にはもう慣れている。
用事があるたびに逐一部屋までお呼びがかかるのは手間だということで、そういう事に決まったのだ。
長官殿がCP9の4名を指差して言う。

「えー、お前ら四人には長期潜伏任務を言い渡す!詳しい事はこの書類を読め。各自で準備しておくようにな!」

なんとも放任的な通知の後、4名にそれぞれファイリングされた書類の束が渡される。
それも、結構分厚いのが数冊。
長期任務とは大変そうだなんて、他人事のように思う。

「んで、こっちはお前な」

ヒョイと軽く放られたのは、彼らよりは幾分か薄めの書類束。

「あの、これは一体...」
「いーからいーから、ちゃんと目ェ通しとけよ」

訴えを半ば阻止するように言われてしまえば、これ以上追求できない。
もう言われるままにパラパラと書類をめくってみる。
すると納得。
司法の塔内のマップに始まり、CP9の詳細な活動内容、それから長官殿の大まかな年間予定などなど。
今後の任務に必要な事ばかりが記載されていた。
意外と出来る人、なのかも知れない。

「まぁ何はともあれ俺の護衛が最優先だ!それさえこなせば文句はねぇよ」
「...承知しました」

無駄に大きな声と高慢な態度さえ慣れれば、そこそこ上手くやっていけるだろうか。

「長官、一つ宜しいでしょうか」
「あ?なんだよルッチ」
「その女の事ですが、一体どのような理由でここに寄越されたので?」

冷ややかな声色と、研ぎ澄まされたナイフのような視線が刺さる。
どうやら、この方にはあまりよく思われてはいないらしい。
ただそんな事を言われたって、何故私が司法の塔に派遣されたのか知らないのだ。
単に司法の塔にいる自身の息子であるスパンダム長官を護衛しろと、ついでにCP9の手助けもしてやれ、そう命じられただけなのに。

「理由だァ?んなモン俺を護るためだって言ってるだろうが」
「...はぁ。ですが、その女が別組織の間者という可能性もあるのでは?」
「ルッチ、そんな言い方お止めなさいな」
「間者だァ?親父がそんな奴寄越すはずねぇだろ」

途中でカリファ殿が窘めてみるも、ルッチ殿はやはり私を睨みつけたまま。
敵意むき出しの視線を全身に受けながらも、素知らぬふりをしてみる。

「とにかく、文句は言わせねェ。でもまぁ、怪しい素振りをすれば相応の処分を検討する。それでいいなルッチ、ナマエ」
「...分かりました」
「私も異論ありません」

怪しい素振りってどういう事だろう。
任務として赴任してきたのに、そんなのする訳がない。
私は命じられた仕事をこなすだけ。
他3名の後に次いで、まだどこか不満げなルッチ殿も部屋を出て行った。


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