私への想いを告げながらも、それはまるで懺悔のようで。
今、私が彼に対して抱いてる気持ちとその想いは同じはずなのに、何故彼はこんなにも…。


「普通に、話しかければよかったんじゃ。クラスメイトとして、普通に。でも俺は、お前に話しかけることが出来んかった」




繋がる、物語があった。




「そんなときじゃった」


額に手をあてながら、こちらに視線も向けずにポツリと呟く。


「お前の友達…高橋が、俺に告白してきた」




「仁王くん、好きなの」




高橋よう子のことは知っていた。
森島の親友で、いつも一緒にいて、森島を見るときに視界には入ってくる人物。

もちろん、告白は断るつもりだった。

ただ、ある想いが浮かんでしまった。



高橋を利用して、森島と、特別に近づく方法はないか。
他の人間とは違う、特別な出会いはないか。



「俺は、好きな奴がおる。お前の、大切な友人。俺が欲しいのは、お前の親友の森島かなえじゃ」



だから俺は、高橋にけしかけた。



「…嫌だ。仁王も、かなえも、私の大切な人で、好きな人で……嫌だ、どっちも…、…嫌だっ!!」




そっからは高橋が森島に話した通り。
ヒステリックに叫びながら抱き着いてきた高橋に押し倒された俺は怪我をして、高橋の家について行った。

高橋が、森島を呼ぶことを予想して。









「まぁ、まさか監禁されるとは思わんかったけど。でもな、考えてみんしゃい。高橋は女で、一人で、刃物とかも持っとらん。いくらなんでも、男の俺が逃げれんわけないじゃろ」



本当は、気付かなかったわけじゃない。
私は、本当は色んな矛盾と嘘に、気付いていた。
だけど、気付かないフリをした。

それを口実に、私が、仁王と一緒に居たかったから。


「ほんまはな、今日をきっかけに仲良くなれたらー、とか思っとったけど…」

「……」

「人間て、もっともっとって、すぐ欲張りたくなる」

「……」

「お前の気持ちの変化は、手にとって分かった。死ぬほど嬉しい」

「……」

「けどな、だからこそ、高橋利用して、お前に嘘をついて、それで上手くいくのは、あんまりじゃから」



てらてら赤く光っていた夕日が、ゆっくり沈んでいく。

今日の終わり。


「……お前とは、もう喋らん」


隣に座っていた仁王が、おもむろに立ち上がる。
私は、彼の方を向くことが出来なかった。


涙が、零れそうだったから。




「かなえ」

「……」

「…最後に、キス、してもええ?」

「……」

「ふっ、…ダメか。」

「……」

「森島。…じゃーな」



仁王が去っていくのを背中で感じながら、私の顔はぐにゃりと潰れて、やっと溜まった涙を流せた。

違う、違うよ仁王。

ずるいのは、あんただけじゃなかったのに。




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