私ってさ、あんたのなんだろうね?





It was loved.2





「今日、お前の家行ってもええか?」
「え…!」


そんな突然すぎる提案をされたのは昼休み。彼氏の一氏…ではなく、友達とお弁当を食べていた時だった。
(例によって例の如く一氏は小春ちゃんと食べてる)

私が初めて一氏に出会ったのは私の家なんだから、もちろん彼が家に来たことがないわけじゃない。でも、付き合ってから家に来るのは初めて。

何これ緊張!
え、私は一氏のこと両親に紹介とかした方が良いのかな。わー、照れる!


「べ、別に…ええけど」
「ホンマ?あ、ときに師匠はおる?」


師匠、とは私のおじいちゃんのこと。
私のおじいちゃんは元漫才師で、一氏との出会いはそのおじいちゃんに小春ちゃんと一氏が弟子入りしたのがきっかけ。

…嫌な予感がする。


「い、るけど」
「よっしゃ、じゃあ今日お前の家に小春と行くわ」


やっぱり。


「何で」
「何でて…もうちょいで文化祭やろ。俺、小春と一緒に漫才するから師匠に稽古つけてもら」
「漫才すんのッ!?」


何それ初耳!

まさか、まさか恋人同士にとって重要なイベントである文化祭でまで一氏を小春ちゃんに取られると思ってなかった私は、あからさまにうろたえる。


「じゃ、じゃあ文化祭一緒にまわれへんの…?」
「え、無理やけど」


なに…何それ。
いくら渋々付き合ってくれてるとしても、イベントくらいは一緒に過ごしてくれると思ってた。まさか私より小春と漫才を優先するとは。しかもケロリとした顔で言ってのけて。それじゃ…まんま私より小春や漫才が大切って意味じゃん。


「…」
「どしたん」
「…じゃあ私は誰と文化祭まわればええの?」
「え、友達とまわればええやん」
「友達は彼氏いるし!」


叫ぶように言うと、あからさまにイラついた顔をする一氏。私だってこんなヒステリックみたいに叫んだりとかしたくないけど、でも、あんまりじゃんか。そんな…当たり前みたいに友達とまわれとか…!


「そんなん言うても漫才のリハやら直前練習やらあるんやからしゃないやろ」
「しゃあなくない!」
「…ッチ」


舌打ち!?

彼氏と文化祭をまわりたいという可愛い願望を持つ彼女を前にして舌打ちとは。
…なんか私もムカついてきた。


「ふーん、あっそ!さいですかさいですか…ほんならもうええわ!」
「…」
「彼氏のくせに一緒にいてくへんとかさぁ」
「…………はぁ、」


ヤバ、ため息ついた。

一氏すっごい面倒くさそう。これ結構本気でウザがられてる。このままじゃフラれるよ私。
てか、一氏が私を一番だと思ってないのは分かったてことじゃん。

私、何を今さら縋ったんだろ。


「…ごめん」
「…や」
「私、別の人とまわる」
「…おん」
「でも友達はマジで彼氏とまわると思うから、白石誘うわ」

「お……、は?」

「私、男友達って白石しかおらんし。もし私に連絡つかんかったら白石にかけてな」
「いや、…何で男」
「だから女友達は彼氏いんねんて」
「……………あっそ」



ちょっとした仕返し。

まぁ、私のことを本当に好きじゃなくてお情けで付き合ってくれてる一氏からしたら屁でもないだろうけど。と、自分で思いながら泣きそうになる。でも泣きそうな顔を見せるのは悔しいから、私はトイレに行くと言って席を立った。



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