早めに乗ったのが功を奏したのか、コンパートメントは空いていた。誰も居ないコンパートメントに入ると、ふーっと息をつく。初めてのことなので思わず気を張っていたのかもしれないなと一人納得する。
最近寝れてなかったので、急に眠気が襲ってきた。誰も入ってこないことを祈りレーナは意識を飛ばした。



どれくらいの時間が経ったのだろうか。コンパートメント内に人の気配を感じレーナは目を覚ました。
ぐうっと伸びをしてパチパチと数回瞬きをしていると、声を掛けられた。

「…あの、コンパートメントが空いてなくて、だから…」

くしゃくしゃの黒髪に綺麗な緑の瞳が印象的な眼鏡の男の子が申し訳無さそうに話し掛けてきた。

「ハリー、それじゃ何言ってるかよく分からないよ」

次に喋ったのは赤毛のそばかすが目立つヒョロヒョロした男の子だった。レーナは赤毛の子が言ったように黒髪の子が何を言いたいのかが理解できなかった。

「コンパートメントがどこもいっぱいで、…その、君が寝てたから勝手に入っちゃったんだ。ごめんね」
「……いいよ」
「僕達、新入生なんだ。君は?」
「…私も」
「君も?あ、僕ロン・ウィーズリー」
「僕はハリー・ポッター。よろしく」

この人が英雄、ハリー・ポッター?ヴォルデモートを倒したって聞いてたから、想像と違う。もっと傲慢でゴツイ人だと思ってたのだけど。

「あなたがハリー・ポッターなの。…私はレーナ・クルーガー」
「レーナも僕のこと知ってるの?」
「うん。あなた、すごく有名だもの」
「…僕、君の苗字聞いたことあるな」

お父さんが何か言ってたけど、クルーガー家って有名なの?でもお父さんもお兄ちゃんも普通の魔法使いだけど。…もしかしてお母さんかな?怪しいし。

「どこで聞いたの?」
「いや、うーん覚えてないな。ごめんね、レーナ」
「大丈夫。…ところで今何時か分かる?」
「今は…四時だよ」

思ってた以上に疲れてたのかな?手櫛で髪を整えていると、ぐぅ、とお腹がなった。二人からの目線が恥ずかしくなったレーナは顔を覆った。
途端にドッと湧くコンパートメント。ハリーは椅子を叩いて笑うし、ロンは手をバンバン叩いている。

「……仕方ないじゃない」
「そうだね。き、きみ、ずっと寝てたからお腹が鳴るのもし、しかたないよ。こ、これ食べるかい?」

途切れ途切れにフォローをしてくるロンが憎たらしい。差し出されている百味ビーンズから赤色のものを取り出し口に含む。


「………からっ!!」

またもや湧くコンパートメント。恥ずかしさからか辛さからか、はまたま怒りからか、どんどん顔が赤くなっているのがレーナは自分自身でも分かった。

「さっきの、ビーンズと同じあ、赤色だよ。顔が」






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